いろんな世界
□贈り物
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ピルルルルルルー
電話だ。誰だろう?と思いながら部屋のテーブルに置いていたスマートフォンを取りに行く。画面には「安室透」の文字。
安室さん?なんだろう?と思いながら電話に出る。
『…もしもし?』
「もしもし、ヒロインさん、今家ですか?」
『はい、家ですけど…。どうかされたんですか?』
「よかった。では今から向かいますね」
『え?あむ…』
プープー。
私の返事を待つ事なく電話は既に切られていた。
ーー私の話しは聞いてもらえないのね…
てゆうか、何で家に来るの?
疑問を抱えながらただ来る人を待つことにした。
ピーンポーン…
それからしばらくして、呼び鈴が来客を告げる。出迎えるために、はーいと返事をしながら玄関に向かう。
ガチャっと扉を開くと安室さんの姿が目に映る。
「こんにちは」
『安室さん。
もー、途中で電話切らないでくださいよー。
で、どうかしたんですか?』
「すみません。早くヒロインさんにお会いしたかったので」
なんてイケメンに言われて顔が赤くなるのは、仕方がないと思う。
赤くなった顔をごまかすために俯くと、どうしました?と顔を覗き込まれる。
ーーぅわ!ち、近いー!!
うろたえている私を他所にぱっと近づけていた顔を離す安室さん。
ーーび、びっくりした…
「そうそう。ヒロインさん今日、お誕生日ですよね?
これ、ささやかですが…。
お誕生日、おめでとうございます」
と差し出された小さな紙袋。
『わあ!ありがとうございます!
でも安室さん、どうして私の誕生日なんか…?』
誕生日なんて安室さんに教えた覚えはない。不思議に思って尋ねる。
「蘭さんに聞きました」
ーーわざわざ蘭に私の誕生日を聞いたんだろうか…?
…何のために??まあ、いっか。
『……なるほど…。
見てもいいですか?』
はいと返事をいただけたので、紙袋の中を見ると、綺麗にラッピングされた長方形の箱が入っていた。それを取り出し、丁寧にラッピングを解き、箱を開けると中にはリングチャームのネックレスが入っていた。
「気に入ってもらえるといいのですが…」
『これ…すごくかわいい!ホントにいただいていいんですか?』
「もちろん。貴方のために選びましたから。気に入ってもらえたようで、よかったです」
さらりとこのイケメンは「貴方のために」なんて言えるんだから罪だと思う。
顔赤くなっちゃうじゃん。
でも照れる前にすぐお礼を言いたくて、赤い顔を隠す為に下を向きたくなる気持ちを抑えて、顔の赤いまま
『ありがとうございます!大事にしますね』
と安室さんの目を見て感謝を伝える。
うれしさで自然と顔が綻ぶ。
「いえ、よろこんでもらえてよかったです。
でもそんな顔、他の男には見せないで下さいね?」
『…え、そんな変な顔してましたか?』
ショックと恥ずかしさで頬を両手で押さえながらまた俯く。
もう顔が上げれない…
「いえ、むしろその逆です。
とても魅力的な笑顔だったので、僕以外の男には見せたくないなって」
わあ!っと下を向いたまま声を上げてしまった。
他の人に見せるも何もどんな笑顔だったのか、どうやってそんな笑顔になったのか全くわかりませんけど…。
もう一度見せてくれと頼まれてもできない自信がありますけど…。
ってゆうか、何このイケメン。もう恥ずかしすぎて顔見れないよ。ってゆうかもう顔上げれないよ。
なんかこのままじゃ悔しくて、俯いたまま
『そんな事誰彼言ってたら、そのうち痛い目見るんですからね!』
と苦し紛れに言ってやった。
すると安室さんはまた私の顔を覗き込み、赤くなっている顔を見て満足気に笑う。
「僕がこんなこと言うのはヒロインだけですよ?
それじゃあ、僕はこれで失礼します。良い一日を過ごしてくださいね」
と言って安室さんは去って行った。
私はその背中を見送りながらへたりとその場に座り込んだ。
ーー急な呼び捨てとかずるいでしょ…