いろんな世界

□春の日
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桜の花が満開に咲き誇っている。
春の風が桜の花びらをどこからともなく運んでくる。


私は舞っている花びらを見上げ

『わー!きれい!』

ね、零?と隣を見る。
先程の私と同じように花びらを眺めていた透が私に目を移す。

「ああ。きれいだね」

と答える零の後ろでも桜の花びらは舞っていた。
なんてきれい。零は桜の花びらも似合うなーなんて考えながら零の顔を見つめる。いや、見惚れていた。

「ヒロイン?」

不思議そうに名前を呼ばれて我に帰る。

『あ、ごめん。行こっか』

ごまかすように零から目をそらし、歩き出そうとすると、零に顔を覗き込まれる。零の目はまるでいたずらっこのような笑みを浮かべている。

「もしかして、見惚れてた?」

『!?い、いや、そんなことはないよ……?』

「うそ。目が泳いでるよ?」

『うっ…』

そう。この人は私の心の中を読む天才なのだ。なんでもお見通し。
そして私は嘘が下手だ。だけどもし私が嘘が上手だったとしても、この人には見透かされるんだろうけど。


『…み、見惚れてました…』

すると零は満足したように行こっかと手を差し出す。
私はうんとその手を握り、お目当ての桜の木へ向かう。





桜の木の下でシートを敷き、ヒロインが作ってきたお弁当を広げる。

「おいしそうだね。今朝早くから作ったんでしょう?ありがとう」

『ううん。零と一緒に食べれるの、たのしみで…つくりすぎちゃた』

2人でいただきますをしてお弁当を摘まむ。

「うん。ヒロインすごくおいしい」

『口に合ってよかったー!ありがとう』

いろんな話しをしつつ、2人でお弁当を食べ進め、あっという間にお弁当は空になった。

『ふー!お腹いっぱい!食べすぎちゃった』

「本当においしかったよ。作ってくれてありがとう、ヒロイン」

『零に喜んでもらえてよかったよ』

広げていたお弁当を片付け、2人でまったりしながら桜を見上げる。
桜の木はこれでもかとピンクの花を咲かせている。
頭上の桜も風に舞っている桜もとても幻想的だ。

『きれい…』

「ヒロイン」

名前を呼ばれ、桜の木から零へと顔を向ける。

「愛してる。結婚しよう」


ーーーーー

私は何も知らなかった。零が危険な組織に参入し、名前を変えて戦っていたこと。しばらく会えない、連絡も取れないと去っていった零を何年もただずっと待ち続けていた。
ただ待つことに心が折れそうになったこともあった。でも、零は帰ってくると信じて待ち続けた。

零の大きな戦いは終わり、帰ってきたとき全てを話してくれた。何も知らずにただ待っていた私の無力さが、待つことにも挫折しそうになった弱さが、零をひとりで戦わせてしまったことが、零に申し訳なかった。泣きじゃくり、謝り続ける私に零は言ってくれた
「待っていてくれてありがとう。ヒロインも待つという戦いを十分戦い抜いてくれた。だから俺は1人じゃなかったよ」っと

私はこの人に一生ついていきたい。今度こそ力になりたいと思った。



『私も愛してる。よろしくおねがいします』

微笑んだ頬を伝う涙。
私の左手を取り薬指に指輪をつけてくれる零の顔。
風に舞う桜。
絶対に忘れない。

『零!だあーいすき!!』

と抱きつくとぽんぽんと頭を撫ぜる大きな手。

この人を護りたい。力になりたい。


春の暖かな風がふたりを祝福するようにより一層の桜の花を空に舞い上げた。





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