明日への扉

□9話
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赤井side



早いもので、あれから1週間が過ぎた。

俺はと言えばあれから毎晩、以前はあまり寄り付かなかった自宅に帰り、ヒロインの作る食事を共にするようになっていた。

まともな物を食べているおかげか、ジョディに最近顔色がいいと言われ、俺自身、なんとなく調子がいいのは実感していた。

ヒロインは相変わらずの笑顔で俺の分まで食事を用意して待ち、仕事で遅くなった日が一度だけあったあの日は、自分の家の扉の前で何も食べてないんですよね?と笑顔で待っている始末。

連絡先も交換し、それら一週間も経ったというのに、お互いまだ一度も連絡を取り合ってはいなかった。

俺はできない状況下が多く、連絡を入れることができなかったのだが、俺の状況を知ってか知らずかヒロインもまだ一度も連絡をよこしてきたことはなかった。
まぁ、毎晩顔を合わせているのだから、わざわざ携帯を鳴らす必要はないとは思うが。

しかし、“その日“もヒロインからの連絡は来ていない。だからまさか待っているとは思わなかった。いつ帰るか、むしろ帰って来るかもわからないというのに、些か冷たい夜風にあたりながら俺の帰りを玄関の外でずっと待っていたのだ。

夜遅くまで玄関で待たせるのはさすがに危ないと思い、遅くなる日は必ず連絡をするようにすると言うと、へらっと笑って礼を言われた。


先日の男もまだ周辺をうろついていた。どうやら男はヒロインを付け回しているようだった。
当のヒロインは全く気づいていないようだが。

そんなことを考えながら自宅に戻ってきた。

元々家なんてあるようでないようなくらい帰ることは少なかったが、ヒロインと出会ってからのこの一週間は、仕事も少し落ち着いていることもあって欠かさず帰宅していた。

シャワーを浴びて着替えを済まし、もう帰ってきているであろうヒロインの家の呼び鈴を鳴らす。

『はぁーい』

間延びした返事と共に扉が開かれ、その隙間からひょこっと顔を覗かせるヒロイン。
その目が俺を捉えると途端に笑顔になる。

『赤井さん!おかえりなさい!』

それに、ああ、ただいまとヒロインの頭にぽんと手を置くと、その手の下から俺を見つめたまま、くすぐったそうに笑みを深めるヒロインにつられて口角が上がるのを感じる。

『どうぞ。すぐに用意しますね!』

とぱたぱたとキッチンに向かうヒロインの後を追い、俺はヒロインがよそった料理をテーブルに運んでいく。
それにありがとうございますと笑顔で礼を言うヒロイン。

何もかもがいつもどおりだった。
いつもどおり共に食事をし、たあいのない会話をし、いつもどおりヒロインの家を後にした。


確かにそれまでは全てがいつもどおりだった。




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