明日への扉

□8話
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赤井side




一度自宅に帰宅し、用を済ませてヒロインの家に戻る。

家に入ると中はおいしそうな匂いに満たされている。家の奥まで進み、リビングに入る足音に、料理が綺麗に盛り付けされた皿をテーブルに並べていたヒロインが振り返る。

『あ、赤井さん、おかえりなさい。こちらにどうぞ』

と示された場所に腰を下ろす。

「ほお、これは旨そうだな」

目に飛び込んできたおいしそうな料理に感嘆の声を漏らせば、ありがとうございますと少し頬を染めながら笑うヒロイン。


『さ、食べましょ!』

いただきますと両手を合わせて呟き、箸をとるヒロインに合わせて俺も手を合わせ箸を手にとり、手近の料理に手をつけた。

「…うまいな」

素直に思ったことを呟けば、心底うれしそうに、よかった!と声を上げるヒロイン。

『やっぱり、誰かと一緒にする食事はいいですね!寂しくないし、楽しい』

「そうだな」

俺はひとりでは、ろくな食事をしない。誰かと食事を共にするのも久しかったが、悪くないと思った。


それから食事をしながらたあいのない話しをした。ヒロインは自分の事を聞かずとも教えてくれた。ここにひとりで住んでいる事、両親の事、仕事の事。俺はそれに相槌を打って聞いていた。

ヒロインは自分の事は幾ら話しても、何一つ素性を明かさない俺に対し、何も聞く事はしなかった。聞かれても話せないのだが、だからこそ何も聞かないヒロインに甘えた。

それでも変わらず笑顔を向けてくれるヒロイン。そんなヒロインとの時間はいつの間にか俺にとって居心地のいい、かけがえのないものになっていた。



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