三国無双夢

□幸せの口づけ 張遼の場合
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合わせた唇は甘かった。



















いつもは足早に通り抜けるだけの西庭。
キョロキョロと辺りを見回しながら、目的の人を探す。
あ、見つけた。
ちょこんと覗いた靴先を見つけて、そーっと茂みに入ると、張遼様がいらっしゃった。
笑みがこぼれてしまい、音を立てぬよう口を押さえた。
やはり、ここにいた。
こんなところで寝てしまって。
張遼様がいないって、司馬懿様がとってもお怒りでしたよ。
お仕事を抜け出してきたんですね。
あとで司馬懿様からお叱りを受けても知りませんからね。
口には出さず、心の中でだけつぶやく。
張遼様を起こさないように。
私は司馬懿様から頼まれて張遼様を探しにきたんだから、起こさなきゃいけないんだけど。
ごめんなさい、司馬懿様。
少しだけ。少しだけ時間をください。
心の中で司馬懿様に謝って、音を立てぬよう、細心の注意をしながらその側によった。
戦場に、鍛錬に、張遼様はいつもお忙しい。
わかってますが、いつも、寂しいんですよ。
張遼様の安らかな寝顔。頬へと静かに唇を寄せた。
張遼様のまつげは揺れたけれど、その瞳は開かれない。
それがうれしいような、悔しいような、歯がゆいような。
だって、起きてしまったら、もうこんなこと出来ないから。
恥ずかしいし。
けど、その強い瞳が見たいとも思う。
いつも私を捉えて離さない貴方。
もっと一緒にいたい。もっといろんなお話がしたい。
もっともっと。
どうして、張遼様のことになるとこんなに我儘になってしまうのだろう。
大好きです。
とってもとっても大好きです、張遼様。
ただ、ただ、寝ている張遼様へ想いを込めて。
もう一度、頬へ唇を落とした。
いつもいつも私に優しく微笑んでくださる貴方、想いを言葉にしてくださる貴方、とっても嬉しいです。
照れてしまって伝えられない時もありますが、私も張遼様に負けないくらい張遼様のことをお慕いしております。

「唇にはしてくれないのか?」

目を閉じたまま、かけられた声に心臓が飛び出しそうなくらい驚いた。
とっさに後ろへ退こうとした私の腕を強い力が引き止める。
ゆっくり開かれる。つかんだ力と同じくらい強いまなざし。
「お、起きていらっしゃったんですか?」
「あぁ。いつ口にしてくれるかと思って待ってみたんだが」
ボボン!
鏡がなくとも自分の顔が真っ赤になったのかわかった。
は、恥ずかしくて顔から火が出る。
「蛍華」
「うー…」
「蛍華、こっちにはしてくれないのか?」
張遼様が唇を指差されたのが横目で見えたが首を振った。
ち、張遼様のお顔が見れないー!
「顔が真っ赤だな」
「恥ずかしいんです!」
くっくっくっと張遼様は笑ってらっしゃる。
起きてるならおっしゃってくださればいいのに、寝たふりしてるなんてイジワルだ。
「口づけ以上のこともしているというのに」
それは、そうですが、そういうことじゃないんです。
「頬に出来るのに、なぜ唇には出来ぬ?」
「恥ずかしさが違います!」
「わかった、では目を閉じていよう」
蛍華からの口づけがほしいのだなんて言われたら逆らえない。
うー…
張遼様に促されて覚悟を決めた。
覚悟を決めたけど、心臓がバクバクと音を立てている。
張遼様が起きてるってわかってるから、緊張で震えてしまいそうだ。
深呼吸をして、張遼様の頬に手を添える。
伏せられたままの瞳。
ハーと息を吐き出して、もう一度、深呼吸した。
ゆっくり吐息に吐息を重ねていく。
その唇の柔らかさと幸せを感じて、うっとりしてしまった。
離れたら寂しくて、もっと、と思ってしまう。
「足りないという顔をしているな」
「はしたない女とお思いですか?」
「何を申すか。私ももっとそなたに触れたい」
張遼様の手が添えられた頬から熱が灯る。
もう一度唇が重なる。
張遼様から頂く口づけは、本当に幸せ。
「幸せだな」
「私も幸せです」
「蛍華のここに触れてもよいのは私だけだな?」
「はい」












つぎ、起こしに来る時はまず唇へ頼む。

言われた約束に赤い顔のまま頷いた。





















張遼だと言葉は紳士なのに有無言わさない感じ(笑)
甘寧が一番かわいくなっちゃったかな。

2019/9/16
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