名探偵コナン

□第8話
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沖矢の家でご飯を食べたあの日から、一週間が経った。

私は周りを警戒して過ごしていたが、今のところ不審な人物が近づいてくることはなかった。

だが、今日は朝から何かがおかしい。

『(見られてる?)』

今日はアルバイトの日で、ここはファミレス。

周りを見渡しても黒い服の人はおらず、不審な人物も見かけない。

『(気のせいかな。)』

杞憂であれば良いが……。



――――――――――――



何事もなく仕事は終わる。

今日は降谷や沖矢の送迎はないため、一人でアパートに帰った。

部屋の鍵を開けて、ドアに手をかける。

『(なんだろう、この違和感。)』

ゆっくりとドアを開け、私は部屋に入る。

そして鞄を置いて周りを見る。

『(いつもの部屋。でも、何かがおかしい。)』

朝、アパートを出たときとは何かが違う。

ふと、私は兄の写真を見た。

『(写真の位置が変わってる。誰か部屋に)ッ!』

私は後ろに気配を感じ、すぐに振り向く。

後ろには黒い服を着た男がおり、私が距離を置く前に、私をソファーに押し倒した。

男の長い髪が垂れ下がる。

男は不適な笑顔を見せた。

「探したぜ、ロゼ。」

私は男を蹴り離そうとしたが、脚の上に跨がれしまい動くことができなかった。

降谷にもらった拳銃に手を伸ばそうと思ったが、男に両手首を掴まれ頭の上に固定される。

『ッ!』

男は片手で私の両手首を掴み、私の首に手をかけた。

「会いたかったぜ。」

嬉しそうに笑みを浮かべる男を見て、私は気味悪く感じた。

『(この人は危ない。)』

逃げる方法を探そうとするが、身動きがとれないように押し付けられている。

『(気を付けろって言われたのに、このザマか。)』

やはり、大の男を相手に力では敵わない。

『あなたは誰ですか?』

私の言葉を聞いて、男から笑みが消える。

「記憶がないのか?」

『ええ。』

「フッ、まぁそんなこと関係ないがな。お前は俺たち組織のことを知っている。組織を抜けたお前は、殺さなきゃならねぇ。」

『組織……。(今はそんなこと考えてる暇はない!殺される前になんとかしないと!)』

長髪の男は、私の首をつかんでいた手を離し、私の服をはだけさせる。

『何をッ!』

「綺麗な肌だ。真っ赤に染めたくなる。」

男は懐から銃を出し、私の左肩に銃口を当てた。

『いッ!』

男は容赦なく拳銃で私を撃った。

銃は発砲音がしないものを使用したようだ。

私の左肩からは赤い血が流れ出る。

打たれた部分は熱をもち、激痛が私を襲う。

「愛してるぜ、ロゼ。」

男は私の首をもとに舌を這わせ、チュッと赤い印をつけた。

私は男を睨み付ける。

長髪の男は笑みを浮かべながら、次は私の左脇腹に銃口を当てた。

『うッ!』

2発目が撃ち込まれる。

痛みで意識が遠退きそうなところ、必死で繋ぎ止める。

「くくっ。お前の苦しむ顔を見れる日がくるなんてな。」

男は銃口を私の胸元に当てた。

「あばよ。」

『(お兄ちゃん。零さん!)』

私は強く目をつむった。

パリンッ

「ぐっ!」

部屋の外から何か打ち込まれたようで、長髪の男を撃ち抜く。

男から赤い血が飛び散る。

『(誰かが外からこの人を撃った?)』

男の手が私から離れた隙に、私は降谷から借りている拳銃を取り男を撃った。

バンッ!

「ぐぁっ!」

私は怯んだ男を押しどかして立ち上がり、再び銃口を男に向ける。

「くそッ。」

男も私に銃口を向けた。

バンッ!

撃つのは私の方が速く、男が持っていた拳銃を弾き飛ばす。

男はもう一丁拳銃を持っているのか、懐に手を忍ばせるが、私は迷わずその手を撃つ。

バンッ!

『これ以上抵抗しないでもらえますか?』

「フッ、さすがだな。早打ちじゃあお前には敵わねぇな。」

男は両手を挙げる。

ううー

ピーポーピーポー

外からパトカーと救急車の音が聞こえた。
誰かが呼んでくれたのかもしれない。

「じゃあな、ロゼ。」

男はニヤリと笑いながら、手元から何かを落とす。

床に落ちたそれは、強い光を放ち私の目を眩ませた。

『ッ!』

私は右腕で光を遮る。

そして光が消えた後、そこに男の姿はなかった。

私はその場に崩れるように倒れ、意識を手放した。
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