星空のしたで〜第2章〜(第40〜125話)
□第45話 美人コンテスト
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「そなたにしようっ!!」
「えっ?」
その場にいた全員が、声のした遠くの建物を見上げた。
そこには南蛮風の格好をした男性と、暗い色の忍装束を着て包帯を巻いた男性が立っていた。
「たっ、黄昏甚兵衛!!?」
仙子さんが立ち上がった。
「殿、声が大きすぎます。後から連れてこようと思ってたのに…。」
「よいではないか。もうまどろっこしいのにも飽きた。このまま連れて帰るぞ。」
「…左様ですか。では…。」
二人がこちらを見た。
瞬間、いやな予感がして鳥肌がたつ。
仙子さん、もとい立花くんが、いつのまにか忍装束に着替えて私の横に立った。
「タソガレドキ…!たまみさん、逃げますよ。」
「えっ?」
立花くんが焙烙火矢を投げようとしたそのとき。
手裏剣が飛んできて、立花くんが苦無でそれを弾いた。
四方から暗い色の忍装束の忍者が飛びかかってきて、私は咄嗟に目を閉じた。
次の瞬間、ふわっとした感覚がして目を開けると、そこには食満くんがいて私を抱き抱えて跳んでいた。
「食満くん!?」
「敵が多い。このまま逃げますよ。」
私を抱えたまま走り出した彼に、何人もの忍者が足止めしようと襲いかかってくる。
一体どこにこれだけ隠れていたのだろうというほどの追っ手に、多勢に無勢だと思ったとき、横から潮江くんと七松くんが加勢してくれた。
「行け!」
「あとは任せろ!」
「すまん!」
食満くんが走る勢いを増したとき、突然横から声がした。
「逃げられたら困るなぁ。」
食満くんの腕にぐっと力が入った。
「雑渡昆奈門…!」
食満くんが私を下ろして臨戦態勢をとった。
彼とは、私を抱えたまま逃げることも戦うことも難しいと判断したのだろう。
「おっと、大人しくしてくれたら痛いことはしないつもりだよ。彼女に少し来てもらいたいだけなんだ。」
「断る!」
「うーん、困ったなぁ。殿のせいで計画も台無しだし…。」
包帯の隙間から見える目が、鋭く光った。
「仕方ない。無理矢理貰っていくしかなさそうだね。」
ギンッと金属音がなって、二人の苦無が衝突した。
そのまま、激しい攻防が続いて私は息を飲んだ。
「んむっ!?」
突然、後ろから手と口を封じられ、縄で縛られた。
「たまみさんっ!!」
食満くんが私を助けようとしてくれたが、再び激しく金属音が鳴り響く。
「君の相手は、私だよ。」
「くっ…!彼女に、手を出すなっ!!」
しかし私は敵に抱えられてあっという間にその場から連れ去られてしまった。
必死に追いかけようとする食満くんと、それを阻む包帯の男。
私は、どうすることもできなくて、まるで荷物かのようにただ遠くへ運ばれていった。