星空のしたで〜第1章〜(第1〜39話)

□第6話 花売り
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(数刻前)

私が支度をしてきり丸くん達の部屋に行くと、きり丸くんは私の顔をじっと見てこう言った。

「たまみさん、お化粧してもらってもいいですか?」

「え」

「たまみさんならそのままでも十分売れると思うんですけど、化粧した方がもっと売れると思うから。俺たちもしますし。」

「えっ!?きり丸くん達がお化粧!?」

「女装した方が売れやすいんですよ。俺たち待ってるんで。」

後ろで乱太郎くんとしんべえくんがニコニコ笑っている。
が、私はこの世界のお化粧道具を知らない。まさかこの子達に教えてくれと言えるわけもなく、わかったと答えて足早に戻った。
どうしよう、誰に聞こう。山本シナ先生は綺麗だけど、あまり色々話すと変に勘繰られそうな予感がする。くノ一の子たちもなかなか鋭いし…食堂のおばちゃんも元くノ一だけど、どうだろうか。

「難しい顔をしてどうした?」

「山田先生!」

向こうから山田先生が歩いてくる。私は意見を聞こうと山田先生に事の詳細を説明した。

「なるほど、それなら大丈夫だ。」

「えっ」

見上げると、そこにはいつの間にか

「伝子にお・ま・か・せ♪」

バチコーンッ☆とウインクが飛んできて、とても衝撃的な髭の濃い女性(??)が居た。

「あ、あの…!?」

「ささ、早速お化粧してあげるから目を閉じて♪」

これは山田先生なの!?
色々言いたいことが多過ぎて言葉にならず、私は言われるがまま目を閉じた。

「あら、かわいい〜!これで大丈夫よ!頑張ってらっしゃい♪」

目を開けると目前に鏡があって、ナチュラルメイクの自分が映っていた。

「あ、ありがとうございます…!」

驚いて伝子さんを見ると、伝子さんは「いいのよ〜♪」と言って去っていった。

…何からつっこめばいいのか分からなかった。

とりあえず気を取り直してきり丸くん達のもとへ行き、まずは花を収穫に出かけた。



思ったより色んな花が咲いていて、それを摘んでいくのは楽しかった。

「ちょっ、しんべえくん、これ、虫…取ってー!」

「虫苦手なんですかぁ?」

「うん、そう!は、はやく…!」

しんべえくんはニコニコと虫を取ってくれた。無邪気で可愛い笑顔だなぁ。

「乱太郎くん、薬草あった?」

「多分これだったと思うんですけど…持って帰って新野先生に確認してみます。」

「私には普通の草と同じように見えるなぁ…見分けられるとかすごいねぇ。」

エヘヘと照れたように笑う乱太郎くんも可愛い。
きり丸くんは一心不乱に売れそうな花を探していた。
私も虫への恐怖と格闘しながら花を探す。

みんなで背中のかごに花を抱えて歩いていると、ふと重要なことに気づいた。

「そういえば、私、お金の数え方が分からないや…」

「えぇっ!?」

みんな驚いて私を見る。とりわけきり丸くんは衝撃を受けたようだった。

「…そういう記憶もなくなっちゃってて。教えてもらってもいい?」

「もちろんいいっすけど、そんなことも知らなかったら悪いやつらに騙されちゃいますよ!」

「お金全く持ってないから騙されてもどうしようもないんだけどね…」

すると、きり丸くんは神妙な顔で「これから一緒に稼ぎましょう!」と力強く言ってくれた。

「たまみさん、大変だったんですね…」

乱太郎くんもしんべえくんも涙目でしんみりしてしまった。
戦で全財産を奪われたと思ったのだろうか。
余計なことを喋ってしまったことに後悔すると同時に本当のことを言えない罪悪感にかられ、もうすぐお給料日だからそしたら何とかなると笑ってごまかした。
それから三人は通貨と物価の相場、買い物するときの交渉術を教えてくれた。
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