星空のしたで〜第1章〜(第1〜39話)

□第4話 新学期のあいさつ
2ページ/2ページ

(主人公視点)

朝からいらぬ恥をかいてしまった。
頭を切り替えて身支度をし、山田先生と土井先生と朝食を頂く。

その後、全校生徒の集まる朝礼で、学園長先生は私を学園長の親戚で新しい教員補佐として紹介してくれた。

解散してから隣の部屋を訪ねると、なにやら山田先生と土井先生がもめている。

「今学期は、教科を強化するということで!」

「それはつまり、実技の授業を減らして、教科の授業を増やすということですか?よくまぁそんなことを私の前ではっきりと言えたもんだ!」

「あ、あの…」

ただならぬ空気。
私は暫し白熱した議論を呆然と眺めていた。

結局、教科も実技も両方力を入れていくということで落ち着き、山田先生、土井先生と1年は組の教室に向かった。
お二人の新学期のあいさつが終わったあと、名前を呼ばれて教室に入る。
可愛い11人の瞳が一斉にこちらを見た。

「朝礼でも話した通り、今日から授業を補佐してもらうたまみさんだ。」

「よろしくお願いし」

「何歳ですか?」「ナメクジは好きですか?」「掃除は好きですか?」「どこに住んでるんですか?」「走るのは好きですか?」「お給料はいくらですか?」「馬は乗れますか?」「甘いものは好きですか?」「からくりは好きですか?」「恋人はいますか?」「鉄砲は好きですか?」

「おまえら、質問は休憩時間にひとりずつ言え!」

子ども達はとっても元気で、新しく来た私に興味津々といった感じだった。
私は今日は授業を見学ということで最後列に座った。

「あのね、ぼく喜三太。ナメクジは好きですか?」

「ナメクジ?嫌いではないけど、…もしかしてその中に…?」

「うん、ナメさん達にもご挨拶する?」

「あ、あとにしとこうかな。ほら、先生の話聞こうよ。」

「うん、じゃあまたあとでね。」

のびのびした素直な子達だなと思ったのも束の間、授業はすぐ脱線させられたり中々進まず、とても大変そうだった。
これは…土井先生、疲れるだろうな…。



「…本日の授業はここまで!」

「ありがとうございました!」

みんなきちんと挨拶できるんだなぁ、礼儀正しい。
私も教室を出ようとすると、ふいに手を掴まれた。

「「「一緒にご飯行きませんか〜!」」」

なんて可愛い!
嬉しい申し出に土井先生を見ると「行っておいで」と言われ、そのまま食堂へ行く。
途中、廊下で皆が名前を教えてくれ、食べながら質問の嵐が続いた。
色々聞かれ脱線してまた質問されて…正直何を答えたかよく覚えていないけど、うまく答えられていたのかな。

あっという間に時間が過ぎて、午後の授業の予備鈴が鳴る。
みんなは「またあとでねー」と手を振りながら走っていった。
…嵐のようだ。

とにかく素直で元気な子達だなと思いながら手を振ると、いつの間にか土井先生が横に立ってクックッと笑っていた。

「色々聞かれてたけどちゃんと食べれましたか?」

「はい、元気ないい子達ですね。」

「はは、そうでしょう。」

土井先生は嬉しそうに笑った。

「まぁ、授業は進まなくて大変なんですけどね…。」

急にため息をついてげんなりした顔になる。
表情がコロコロ変わって面白いなぁ。

「土井先生は生徒思いなんですねぇ。」

「え?」

「朝も山田先生とぶつかったり、一生懸命に考えてもらって…は組の子達は幸せですね。」

「それがちゃんと伝わってたらいいんですけどね…」

「きっと伝わってますよ。」

「点数という目に見える形で表してほしいなぁ。」

「そうですね…でもあの自由な子達相手によくあれだけ目を配って授業を進めていけますねぇ。」

「でしょう!ほんとにあいつらときたらいつもいつも話の腰をおるわ昨日説明した内容も覚えてないわで…!あぁ、思い出すだけで胃が…。」

「だ、大丈夫ですか!?」

「ははは、いつもの神経性胃炎なので気にしないでください…。」

「…いつもの……」

これはだいぶお疲れだなぁ…早く補佐できるようになるため頑張らねば!
私は決意新たに気合いをいれなおした。
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ