星空のしたで〜第2章〜(第40〜125話)
□第48話 カステラと甘い罠
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真夜中の食堂。
私はたまに、お菓子作りの練習をしていた。
昼間は中々時間がとれないので夜になるのだけれど、誰もいないので気兼ねなく失敗が…もとい色々と試すことができる。
材料はもちろんバイトで稼いだお金で揃えるのでたまにしかできない。
本を見ながら、今はカステラ作りに挑戦していた。
専用の釜がないので、火加減がとても難しい。
私は何度も失敗を重ね、それでも自分でカステラを作れるようになりたくて何回も練習をしていた。
今日はなかなかいい感じで焼けている気がする。
不意に手が当たって玉子の殻が下に落ちた。
それを拾おうとしたとき、小麦粉の袋をひっかけて、頭の上から小麦粉をかぶってしまった。
「やっちゃった…!」
頭も着物も真っ白になってしまった。
とりあえず周りに飛び散った粉を片付ける。
ちょうどここからは火を消して蒸らすタイミング。
粉ははらうだけでは取れなかったので、私は仕方なくお風呂に向かった。
「わぁっ!」
途中、暗くて足元が見えず落とし穴に落ちてしまった。
ギリギリ自力で上がれる深さだったけれど、小麦粉だけでなく土だらけにもなってしまった。
真っ暗な学園のなかを歩くのは心細く、遠くに灯りが見えてほっとした。
真夜中なのに、誰かがお風呂に入っているようだ。
浴槽にお湯を沸かしているようで、煙突から湯気があがっている。
これはラッキーだと思いながら、小麦粉と土を周りに落とさないよう慎重に着物を脱いでかごにいれる。
急いで洗って戻らなくては。
がらっ
先客は湯舟の中に浸かって背中を向けていた。
長い髪を湯舟に浸からぬよう上に束ねてあげている。
「失礼します。」
私は声をかけて中に入ると、すぐに髪を洗い始めた。
それにしても、こんな時間にお風呂に入るって何かの訓練があったのかな?
夜が忍者のゴールデンタイムって、女の子でも同じなんだなぁ。
洗い終わった髪を束ねて体も洗っていく。
今日のカステラはうまくできたらいいな…。
次も同じように焼けるようメモをとっておかなくちゃ…。
そんなことを考えながら体も洗い終わった。
せっかくだから私も少し浸かろう。
そう思って湯舟の方を見て固まった。
「…ど、い…せんせい…?」
湯舟には、真っ赤な顔でぽかんとしている土井先生がいた。