星空のしたで〜第2章〜(第40〜125話)
□第47話 奪還
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私は先程の和室に一人ぽつんと座っていた。
忍術学園では周りに誰かがいたり忙しくしている時間が多かったので、一人で何もせずにじっとしていると余計に不安が募った。
…土井先生……。
頭に浮かぶのは、いつも優しく助けてくれた土井先生の笑顔。
助けに来てくれるかな…ここが分かるかな…。
……会いたい…。
どうなるのか不安で涙がこぼれそうになるのをぐっと堪える。
…大丈夫。
きっと助けに来てくれる。
きっと見つけ出してくれる。
私は大きく息を吸った。
でも頼ってばかりではだめだ…。
自分でも何か出来ないか考えなくては。
窓から外を見てみる。
下は川になっていたがとても飛び降りることができる高さではなかった。
そして外はもう暗くなってきていた。
土井先生の授業を思い出してみる。
こういうときに役立つことがなにかなかったかな…。
そうだ、隠し通路とかないかな。
私は掛け軸の裏や戸棚の中などを確認したけれど、それらしきものはなかった。
ちらりと床の間に置かれている巻物を見た。
これを使えば…使い方も分からないけど…ここから逃げられたりするのだろうか。
手に取ろうとして、また手を引っ込めた。
いや、やはり、万が一、元の世界に戻ってしまうようなことがあったら嫌だ…!
こんな形で土井先生と…みんなと会えなくなるなんて、耐えられない…!!
巻物には頼らず、なんとかしなければ…。
……土井先生…。
自分の胸に手をあて、首からかけている笛をそっと押さえた。
出かけるときに持っているようにと土井先生が作ってくれた笛。
もしかしたら、一度吹いてしまえばこの存在が知れて取り上げられてしまうかもしれない。
使うときは慎重にしなければ…。
そのとき。
遠くでドーンと大きな爆発音が続けて鳴り響いた。
なんだろう。
畳に耳をつけて耳を澄ます。
バタバタと何人かの足音が聞こえた。
「曲者だ!倉庫から火の手があがった。消火と捜索に分かれろ!」
…助けに来てくれた!?
嬉しく思った反面、怪我したりすることがないだろうかと不安になった。
そのとき、襖が音もなくあけられた。
しかし、そこに立っていたのは期待した黒装束ではなく。
「雑渡さん…!」
「やっぱりこうなっちゃったから、少し移動してもらおうかな。悪いけどちょっと我慢してもらうよ。」
雑渡さんが目でついてこいと促す。
「ど、どこへ行くのですか…?」
「んー、もうちょっと見つかりにくいところ。地下だけど今はそんなに寒くないから。」
そんな所へ行ってしまったら、見つけてもらえなくなるかもしれない!
私は焦った。
そのとき、もう一度更に大きな爆発音が聞こえた。
「これは…置いてた火薬がやられてしまったか。」
雑渡さんの意識がそちらに向いたとき、私は胸から笛を取り出して勢いよく吹いた。
ぴりりりりっ!
鳥の鳴き声のようなとても高い音が鳴り響いた。
雑渡さんが私の腕をがっと掴み、笛を取り上げた。
「か、返してください!」
「こんなものを持っていたのか。…預かっておこう。」
そのまま腕を引っ張り私を連れていこうとする。
「いやっ…!離してくださいっ!!」
抵抗するもびくともしない。
もう一方の腕も掴まれ、両腕を頭の横で壁に押しつけられた。
「大人しくついてくるんだ。」
雑渡さんの鋭い目に射ぬかれて、私はその場に立ちすくんだ。
そのとき。
カカカッ
彼の居た足元に手裏剣が刺さった。
彼が大きく後ろに飛び退くと、私の目の前が真っ黒になった。
「彼女に触るな…!!」
それは、私が切望した声だった。
「土井先生…!!!」