星空のしたで〜第2章〜(第40〜125話)

□第46話 黄昏時
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黄昏甚兵衛というお殿様の前に通された。
南蛮風の少し変わった感じのお殿様だった。
下睫毛が長くて髭がくるんと巻いてる…。

「そなた、名は何と申す。」

「…たまみといいます。」

じーっと顔を見られた。
なんだろう。

「そうか。…実は、夢でお告げがあってな。」

「お告げ?」

「とある巻物と、その巻物にゆかりのある娘を手に入れれば、城が栄えるというお告げだ。」

「!」

巻物にゆかりのある…その巻物とはさっき見たものだろうか。

「夢の中に出てきた、そのゆかりのある娘の顔が思い出せず、探す方法もなくてな…手当たり次第に娘の顔を確認するために回りくどいことをした。…だがお主を見たときにピンときた。」

お殿様はスッと目を細めて私を見据えた。

「たまみ、お主あの巻物を知っているな?」

「…!」

咄嗟に嘘がつけなかった。
私の固くなった表情を見て、雑渡さんが頷いた。

「先程、巻物を見つめて手を伸ばそうとしておりました。」

「やはりそうか。…では、たまみよ。」

「………はい」

「そなたには、私の妻になってもらおう。」

「…えっ?」

ぽかんとしていると、お殿様がくすりと笑った。

「可愛い娘であればいいなと思っていたが、想像以上に可愛らしくてよかった。これからは、何不自由なく暮らせるぞ。」

「そ、そんなことは望んでいません…!申し訳ありませんが、私を帰らせてください…!」

「ならぬ。せっかく見つけたのだ。逃すわけがなかろう。…雑渡、これまで候補として念のため捕らえていた娘達を村に帰してやれ。」

「畏まりました。」

「私も帰ります!あなたの妻にはなりません…!」

「お主に拒否権はない。」

ぴしゃりと言いきられ、私は途方にくれた。
どうしよう…!
助けを求めて後ろに控えていた諸泉さんを見たけれど、彼は黙って俯いているだけだった。

「余計な邪魔が入らぬよう、明日婚礼の儀をあげる。少しゆっくり休むといい。さがっていいぞ。」

そう言うと、私は雑渡さんに連れられて部屋を出た。

どうしよう…土井先生…!

私は土井先生の顔を思い出し、涙がこぼれ落ちないようにぐっと歯を噛みしめた。
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