星空のしたで〜第2章〜(第40〜125話)

□第42話 深夜の放課後
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ここ数日、土井先生は午後に実技の授業を手伝うことが続いていた。
私は職員室で一人、土井先生から任された仕事をこなしていく。
土井先生の役にたつことが出来ているのが嬉しい反面、土井先生と二人で話す時間が全く無い日が続くことに、寂しさを感じていた。
隣の部屋なのに、そういうときに限って偶然会うこともない。

「土井先生は平気なのかな…。」

誰にも届かない声はそのまま部屋に消えた。

こんなことを考えていると知ったら、重たいと思われるのかな…。
忙しくてそんな余裕はないとか思われちゃうのかな…。

私は土井先生の机をそっと撫でた。

近くにいるのに遠い。
それがこんなにもどかしいなんて…。

私はため息をついて、筆を再び動かし始めた。



そんなある日。
一年は組が深夜の授業をすると聞いた。
夜の行動を身に付けるために深夜に授業をするらしい。

今夜は一年は組の順番。
夜中に教室に集まったが、みんな暗闇で目が慣れないうえに眠そうにしていた。

「忍者は深夜に行動することが多い。では、夜道で先が見えないときはどうしたらいい?」

土井先生は暗闇の中でもいつも通りに授業をしている。
さすがだなぁ。
私はいつもあまりじろじろ見すぎてはいけないと我慢している土井先生の授業を、ここぞとばかりにじっと見つめて堪能した。
月明かりとろうそくの灯りで微かに見える土井先生の姿。
見えにくい分、声がはっきりと聞こえて耳に心地いい。
深夜の教室なんて怪談のようで怖いと思っていたのに、土井先生の声を聞くだけで安心している自分がいた。

斜堂先生が生徒を驚かせて眠気を覚ましてくれたりしながら、何とか教科の授業が終わった。

「深夜の授業2時間目担当の山田先生が校庭で待ってらっしゃる。速やかに行くように。」

みんなは暗闇のなか歩くのも大変そうだったけれど、ぞろぞろと校庭に向かっていった。
斜堂先生は「また必要なときに声をかけてください」と仰って部屋に戻られた。

土井先生が教室の窓から下を見て、みんなが山田先生のもとに辿り着いたことを確認する。
今夜は満月。
窓から差し込む月明かりが土井先生を照らしていた。
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