星空のしたで〜第2章〜(第40〜125話)
□第41話 おでん事件
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(おまけ)
「ねぇ、きりちゃん。土井先生がおでんを食べようとしてるよ…!」
「ほんとだ!泣きそうな顔しながらつついてる…!」
「いつも僕達にこっそり食べてって言うのにどうしたんだろうね。」
乱太郎、きり丸、しんべヱの視線には気づいていたが、どうすることもできず私はため息をついた。
うぅっ、くそっ…。
たった一切れなのにやっぱり食べれない…!
しかし、指切りまでしてしまったし…。
『私の手作りおでん、尊奈門さんは美味しいって食べてくれたんだけどなぁ…。』
彼女の言葉を思い出す。
くっ、尊奈門くんめ…たまみさんの手料理は私の方が食べてるんだからな。
大体なんだ、私を倒しに来ているはずなのに何で彼女と食べたり話したりしているんだ!
いや、そりゃ今回はたまみさんがその場で練り物をたいらげようと頑張ってくれていたというのは聞いたが…。
……次に来たときはきっちり相手をした方がいいかもしれんな…。
「あ、土井先生食べちゃった。」
「すげー…。不機嫌な顔で何か考え事しながらホントに食った。」
「あれ、食べたこと本人気づいてないんじゃない?」
「土井先生!私、嬉しいです!!」
「へっ?」
「ほんとに食べてくれるなんて…!私、これからも土井先生が食べてくれるような美味しいおでん作れるように頑張りますっ!」
突然たまみさんが大喜びでやって来て私の両手を握りぶんぶんと振った。
そのまま満面の笑みで調理場へ戻っていく。
何を喜んでいたのか分からなくてお皿を見ると、先程まで格闘していた一切れの竹輪が無くなっていた。
まさか、考え事に気を取られて食べてしまっていたのか…!!?
そして、今しがたの彼女の言葉を思い出す。
『これからも土井先生が食べてくれるような美味しいおでん作れるように頑張りますっ!』
…こ、今回限りにしようと思っていたのに…!
私は大きなため息をついて、空になったお皿を見つめた。