星空のしたで〜第1章〜(第1〜39話)

□第9話 海と波と貝
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浜辺に座って波を見ながら三人を待つ。
小舟では三人がおしゃべりしながらじっと魚を待っている。
波の音が耳に心地よく、隣に土井先生がいても沈黙が全然気にならなかった。

「…たまみさんって、意外とアクティブですよね。」

「そうですか?何だか楽しくてはしゃぎすぎたかもしれません…」

「やりたいことやったもん勝ち、ですよ。」

土井先生がそう言ってくれたものだから、私は調子にのってみた。

「もうひとつ、やりたいことがあるんです。」

「何ですか?」

「海に入ってみたくて。」

「えっ?」

「気持ち良さそうですよね。」

私は立ち上がって波の方へ向かった。

「ちょっ、濡れちゃいますよ!」

「足だけだから、大丈夫です!」

私は裾を手に持って、足だけ海につけた。
海水はまだ冷たく、足元の砂が波と共にさらさらと動くのが気持ちよかった。
ざぶざぶと歩き、水を前に蹴ってみる。
きらきらと水しぶきが飛んで、綺麗だった。

と、突然波の音が大きくなったなと見た瞬間、大きな波が寄せてきた。

「わっ!」

私は水の勢いに押されて、ばしゃんと倒れてしまった。

「たまみさん!」

土井先生が慌てて立たせてくれた。

「すみません、つい見とれ…いえ、大きな波が来るのに気づきませんでした。だいぶ濡れちゃいましたね。」

「あっ、…私のせいで、土井先生も濡れちゃいましたね、すみません。」

慌てて来てくれたのか、土井先生は袴の裾も捲らずに海に入ったので濡れていた。

「これくらいすぐ乾くでしょう。」

「…じゃあ土井先生、濡れたついでに遊びませんか?」

「へ?」

私は水面の水を少し手で掬って土井先生にぱしゃりとかけてみた。

「忍者の先生だったら、どこまで避けれるのかなって。」

「そんなの忍者とか関係ないでしょう。」

そう言う土井先生の笑顔に嫌がる雰囲気はなかったので、私は更に水をばしゃっとかけてみた。

「やったな!」

土井先生も反撃してくる。
年甲斐もなく、二人で大笑いしながら水をかけあって遊んだ。


「あの…何やってんすか?」

「「!」」

ふと気づくと、魚を手にした三人がこちらを呆れて見ていた。
私と土井先生はいつのまにか肩まで濡れていて、言い訳する言葉も見つからずあははと笑った。

大量の収穫物は今からきり丸くんが町へ売りに行くという。

「たまみさんにも売り子お願いしようと思ってたんすけど、そんなに濡れてたらちょっとあれなんで…また今度お願いします。」

「はい、ごめんなさい…」

これじゃどちらが生徒か分からないなぁ…しゅんと反省しながら、次は着替えを持ってこようと思った。

結局、乱太郎くんきり丸くんしんべえくんの三人は両手に収穫した魚やら貝やらを抱え、町へ歩いていった。
私は濡れて張り付く着物に苦戦しながら、土井先生と忍術学園へ戻ることになったのだった。






(おまけ)

「学園に着くまでに乾かなかったですね…」

「海水はべとべとしますしね。とりあえず、山田先生に見つかる前に塩を落として着替えなくては…」

「私がなんだって!?」

「や、山田先生っ!」

「帰りが遅いと思ったら、なんだね二人ともずぶ濡れで。三人はどうした?」

「えー、三人は魚を売りに行きまして、我々はその…はは、ちょっと波に。」

「……まぁ、怪我がないなら構わんが。さっさと風呂に入ってきなさい。」

「はぁ、すみません…」

「二人で入ったりするなよ。」

「当たり前ですっ!!」
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