夢想乱舞


□▼ 妖ノ花 −アヤカシノハナ−
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『……ん……』


「ああ、目が覚めたかな?」

『……?にっかり、さん……?』



目を覚ますと、そこは自分の部屋ではなく、
刀剣男士達の個室で。
誰の部屋だろう?と、ゆっくり起き上がれば
少し離れた位置に、にっかりが居た。
どうやら此処は、にっかり青江の自室のようだ。



『あの……私、どうしてここに?』

「あれ、覚えていないのかな?
君、浴室の脱衣所で倒れていたんだよ」

『そう、なんですか……?』


(思い出そうとすると、頭が痛い……)


桜月が鈍い頭痛に顔をしかめて俯けば、
にっかりがすぐに隣に移動し、
ひんやりした冷たさが気持ちいい掌を
額に当てて、心配する。



「大丈夫かい?まだ、辛そうだね」

『あ……大丈夫、です。
ちょっと、頭痛がしただけで……』

「無理は禁物だよ。僕の部屋は……
あやかし達が寄って来やすいからね。
霊感が強い君なら、解るはずだよ」

『……!』



桜月は、ハッと目を見開いた。
確かに、感じるこの空気、気配は、
人ならざる者達のモノだ。
集中して視てみれば、結構な数が居る。



『どうして、こんなに沢山……?』

「ふふ……“彼女達”は、嫉妬しているのさ。
僕らの愛情を一身に受ける、君にね」

『彼女達……?』



確かに、視えて確認出来るモノは
全て女性だ。しかも、皆若い女性ばかり。
何故……?私は、この世界で
彼ら刀剣男士以外の存在を知らない。

桜月は不思議に思い、
にっかりに訊ねた。



『にっかりさん……?』

「なんだい?彼女達が、気になる?」

『はい……』

「ふふ……桜月……」



不意に名前を呼ばれ、
桜月は反射的に振り向き
にっかりを見つめる。
にっかりは、何も知らない
愛しい主の柔らかな頬をそっと撫で、
顎を指で挟み持ち上げると、
ちゅく、と口付けた。



『んっ……』

「彼女達に、見せ付けてあげようか。
僕らが如何に、君の事を
愛しているかを、ね……」



質問の答えは……と訊く為に
開いた唇を、再び、今度は深く、
唇で塞がれた。

ちゅく、ちゅく、と
濡れた音を立てて
熱い舌が絡まり合う。

その快楽に、桜月は
あっという間に堕ち、
にっかりの上着をきゅっと掴んで
自らも舌を深く入れ、
積極的に絡ませた。

二人の唇が離れる頃、
二人の舌先には、
名残惜しそうに繋がる
銀の糸が艶めき光っていた。





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