夢想乱舞


□▼ 妖ノ花 −アヤカシノハナ−
3ページ/7ページ





あっという間の出来事に、
桜月は暫くぽかんとしていたが、
ふと我に返り、乱れた衣服を直しながら
独り言を呟く。



「一番古株の清光の力が必要な事って、
何なんだろう?気になるな……」



(湯浴みに行くついでに、
ちょっと様子見てこようかな……)

そう、心の中で思い立った桜月は、
湯浴みの準備をしてから部屋を後にした。





(そういえば……
お風呂場ってどこだっけ……?)


桜月は根本的な問題に今更気付き、
廊下を歩きながらきょろきょろと
周囲を見渡してみる。

桜月は、所謂
方向音痴というものだった。


暫く廊下を歩いていると、
縁側の向こうに
大きな見慣れぬ蔵がある事に気付き、
その蔵の中に丁度、
加州が入って行くのが見えた。


(あっ、清光……!)


加州を追って、蔵の前まで来た桜月だったが、
そこで彼女は衝撃の光景を目撃してしまう。





「いっ、いやぁぁ!!
やだ、死にたくない……っ!!」

「黙れよ、クズ。五月蝿い」


──ザシュッ!


恐怖に戦慄き、足が縺れて
床に尻餅を着いた女性が、
必死に後退りしながら命乞いする。

だが、加州は苛立ちを滲ませた無表情で
刀を抜き、振り上げ……
勢いよく、首を撥ねたのだ。


絶命した体がゆっくりと床に倒れ、
ごろりと重たい音を立てて
切断された頭部が床に落ちる。
その頭部、光を失った虚ろな瞳と
桜月の目線が合ってしまい、
桜月が目を逸らせずに固まっていると……




「ああ……見ちゃったんだね、
いけない子だ」


そう、優しくも冷たい声音が
頭上から降り、同時にそっと両目を
背後から片手で塞がれ、体も優しく
片腕で抱き締められた。



「さあ、部屋に戻ろうか。
君の記憶から、あの汚い光景を
消し去らないと……ね?」

『は、い……』


(ああ……頭がぼーっとする……
この声は、誰だろう?
意識が……薄れてく……)


そうして完全に意識が途切れ、
眠りに落ちた桜月の体を
抱き留め抱えたのは、
妖しい笑みを浮かべるにっかり青江だった。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ