夢想乱舞


□▼ 籠ノ鳥姫
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障子の向こうから近付いてきた足音が、
三日月宗近の部屋の前で止まり、
すっと襖が開けられる。



「三日月の旦那、薬研だ。
呼ばれて来たぜ」

「薬研か、入れ」

「邪魔するぜ」



医学の心得があり、この本丸での
医師と薬剤師を兼ねている
薬研を呼んだのは、他でもない。
薬剤の話をする為だ。



「薬研、例の薬は完成したか?」


そう聞かれ、薬研はにやりと
口角を上げ、妖しく笑みを浮かべる。



「ああ。今朝方、漸く完成した。
これが、その薬だ」


そう言って三日月の掌に乗せたのは、
瑠璃色が綺麗な丸薬。


「これはまた、見事に美しい丸薬だな」

「そうだろう?俺っちの力作だからな」



三日月が依頼し、薬研が製薬した
この薬の正体……それは、
桜月を永遠に此方の世界に
置いておく為の手段。

桜月の記憶から、
現代に居た頃の記憶を
完全に消し去る、秘薬だった。



「では、薬研。時を見計らい、
これを飲ませてくれ」

「ああ、任せろ」


薬研は軽く一礼し、部屋から出る。
すると、丁度此方に向かって
太刀の小狐丸が歩いて来た。



「薬研か。三日月に呼ばれたのだな」

「ああ、例の薬の件でな」

「ふふ、その表情からして、
上手く出来上がった様だな?」

「ああ……期待していてくれ」



月光に照らされた二振りは、
妖しく口角を上げ、笑みを浮かべた。






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