夢想乱舞


□* 幼馴染みの特権
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季節は夏。
ジリジリと焼ける暑さの日。


校舎内で一番、クーラーが効いていて、
尚且つ、風通しの良い三階にある
図書室で、大倶利伽羅は
授業をサボり、昼寝をしていた。


大倶利伽羅が丁度、
眠りから覚め始めた頃。



「あー……やっぱりここに居た……!」



授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、
放課後となった図書室のドアが開き、
図書委員であり、大倶利伽羅の
幼馴染みの桜月が、
ムスッと頬を膨らませて入室し、
床に座り寝ていた彼の隣に座った。



「もうっ!伽羅ちゃんてば、
また保健の授業休んで!
ダメでしょ?赤点ギリギリだよ?」

「…………ダルい」

「またそんな事言って……
心配してるんだよ?
伽羅ちゃんとは、一緒に
高校卒業したいから……」




彼、大倶利伽羅の幼馴染みである
私・桜月は、保健の授業が
赤点ギリギリである彼の事が、
心配で堪らなかった。


幼稚園の頃からずっと彼と一緒だが、
幼い頃から、こうして他人と
馴れ合う事を避ける一匹狼だった。

けれど、私の事は嫌がらず、
何だかんだで受け入れてくれる。
それはやっぱり、
幼馴染みの特権かな?と、思う。


何より……幼稚園の頃からずっと、
私は彼が好きで、初恋をしている。

だから、こうして傍に居る事を
許してくれている彼の優しさが、
何より嬉しかった。


例え、叶わぬ恋になったとしても……
私は、それでも良いと思っていた。





「……おい」

「ふぇっ……?!」



びっくりした……!
うっかりぼーっと考え事に
集中してたら、伽羅ちゃんの顔が
至近距離にあって……
変な声出ちゃったよ……



「ごめんね、考え事してた……!」

「…………アイツの事か?」

「えっ……?誰の事……?」



きょとん、とする私を見て、
はあ、と短く溜息を吐かれた後、
スッ……と目を細めた彼に、
優しく頭を撫でられた。



「家庭科の光忠。昨日の放課後、
こうしてお前に触ってただろ」

「! ああ、光忠先生?うん。
調理実習で作ったずんだ餅を
褒められたんだ♪」

「…………」

「……?どしたの?」


あ……ちょっと機嫌悪くなったな……
やっぱり、ずんだ餅そんなに
食べたかったのかな?
次からは一番に伽羅ちゃんに
試食して貰おう。


そんな事をまた考えていると……


「……桜月」

「え?……っん……」



ふわり、男の子のいい匂いがすると
同時に、突然、唇を奪われた。

それは、勿論、ファーストキスで。



「アイツにも、他の男にも、
俺以外の奴には触らせるな」

「……う、ん……ごめん……」

「お前に触れていいのは、俺だけだ 」

「伽羅ちゃ……ん……っ」



言葉を遮るように、もう一度。
今度は深く、熱い舌を絡められて。

巧みな蕩けるキスに、
私は完全に酔いしれた。





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