短編
□バレンタインその後2
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放課後。
葵は朝、バスで来たらしいから帰りもバスやろうな。
バスだと大通り走って遠回りだから、住宅地を抜けるチャリの方が早いんだけど、この足じゃ仕方ないって話してたし。
さてと、あたしは部活に行くかな。
ギターかき鳴らしたい気分やし。
それから1時間くらいして軽音部の部室(という名の音楽室)からふと外を見ると真下にある駐輪場で
葵が松葉杖片手に自転車に乗ろうとしてる。
いや、それ無理やろ。
バスで帰るんじゃなかったんかい。
「悪い、今日はもう帰るわ」
「あいよー」
駐輪場まで行くと優子先輩がいて
「もう、大島さんに任せときなさい!って」
『いやいや。さすがに悪いですって』
「な、なにしてるん?」
「お。ちっち。葵が松葉杖持って自転車乗ってくって言うの。足痛いくせに」
『昨日、乗って帰れなかったし、ずっと置きっぱだと盗まれちゃうじゃないですか』
「だから、ほれ。乗りな」
そう言って優子先輩は葵の自転車に跨がってる。
「あたしが乗せて行きますよ」
『え?』
「先輩に乗せてもらうん抵抗あるんやろ?」
『でも・・・』
「・・・ちっちは途中から道違うじゃん。あたしは葵の家の先だもん。ちょうどいいじゃん。
ね!決まり!!さぁ、葵、乗れ!」
『じゃぁ、・・・・お願いします』
そう言って、葵は優子先輩の後ろに乗った。
「あ、おい!」
「よっしゃ行くぜぃ。ちゃんと松葉杖持って、しっかり捕まっとけよ」
『・・・じゃぁ彩、また明日。ありがとね』
「あ、いや・・・」
優子先輩のお腹に手を回して掴まる葵。
『じゃーね、ちっち』
満面の笑みをあたしに向けて走り去った。