短編

□理由
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ちょっと強めに言っちゃったことを後悔。
葵は俯いて目を合わせてくれない。




少しの沈黙のあと





『・・・軽蔑・・・して・・・るでしょ?』


「してへんよ」


なるべく優しく言ってやる。
葵が涙声だから。


『・・ふぅぅ・・・ぅうっ・・・ぐすっ・・・』


ついに泣き出したからゆっくり抱きしめて背中をトントン撫で撫でして葵が落ち着くのを待つ。


あたしの肩がだいぶ濡れた頃、おでこを肩に乗せたままポツポツと話し始めた。


『なんか・・・不安なんだ。みんなに頼られて嬉しいけど・・・・私はそんな完璧じゃないし。でも頼られるからには完璧にならなきゃって・・・・少しでも気ぃ抜いたらもう誰も頼ってくれなくなるかも。・・・そう思ったら息できなくなってきて。・・・・・だからたばこ吸って完璧でいい子なんかじゃない自分を作った・・・』


「バカだなぁ。そんなんで離れていくような奴らじゃないやろ?みんな葵と話したい口実やろうしな・・・でもごめんな。気づいてやれなくて」


『ううん。なんで彩が謝るの?気づかせないようにしてたんだもん』


「これからは不安になったらあたしのとこに来たらええから」


『いや!彩に迷惑はかけられない!!』


「全然迷惑ちゃうって・・・むしろ嬉しいし・・・・・・そ、それに葵が頼るとしたらあたしくらいしかおらんやろ」


つい本音が出ちゃってごまかしたんやけど葵はガバッと体を離して


『え?嬉しいの?』


ってニヤニヤ。
さっきまで泣いてたくせに。


「おい、こらニヤニヤすんな」


『あはは。ありがと、彩』


「ん。タバコやめれるん?」


『うん。多分。別に好きなわけじゃないから』


そう言ってゴミ箱に残りのタバコを捨てた。




それからというもの、葵はメンバーに一通り構われた後には必ずあたしのそばにいる。


今も椅子に座ってるのに背中にぴっとりくっついてて背中には葵の頬が、お腹には手が回ってる。


ひとつの席に二人で座ってるからちと狭い。


『え?そうなの?彩、ごめん』


そう言って立ち上がろうとする葵。


目の前に座ってる朱里が


「葵、気にせんくて大丈夫やで。
さや姉ニヤニヤしとるもん。ふふ」


「・・・朱里、黙って」


『そうなの?んじゃ、いっか』


さっきより更に密着して


『はぁ』


「人の背中でため息つくなや」


『やっぱり落ち着くなぁって思って』


「そうか?」


『うん。ちっさいのにでっかい背中』


「・・・・・?」


『・・・お父さん』


「おい」


『あ、でっかいのはこっちもか』


もみもみ


「おい。こら」


『・・・お母さ〜ん』


「ははっ。子守りが大変やわ」


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