短編

□バレンタインその後2
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彩side


昨日、葵から想いを告げられたあと、だいぶ待ったのに結局、美優紀は来なかった。




葵と第一声は何話したらいいんかな?

とりあえずおはようでいいよな?

昨日のことには触れずにいた方がいいよな?

いや、でも何事もなかったように振る舞って傷つかへんか?





色々考えながら教室に着くとなにやら葵の周りに人だかりができとって。

「大丈夫?」
「痛そうやね」
「なんでも手伝うから言ってね」

とか言われてて、人だかりのせいで本人は見えないけど


『うん、大丈夫。よくあるし』
『痛いよー。足取れるかと思った』
『ありがとう。助かる』


なんて答えてる。



「お、彩!おはよう」


ってあたしに気づいた岸野が言えば


人だかりが一斉にこっちに振り向いた。


「っ!お、おはよう」


人だかりの隙間から顔が見えた葵が


「彩、おはよ〜」


って言ってくる。


人だかりはそれが合図かというように


「じゃ、葵ちゃんお大事に〜」


とか言いながら去っていく。


去り際あたしの横を通りすぎながら


「彩、おはよ〜」


「彩ちゃん、おはよう」


ってみんな言ってくからあたしも答えたけど
みんな微妙な笑顔やった気がしないでもない。


とりあえず、葵に目を戻すと


え?


「どうしたん!?何があった?」


『昨日、優子先輩が部活に来てくれてさ、ついつい負けず嫌いに火がついて熱くなっちゃってさ』


「松葉杖ってよっぽどやんか」


『なー、大袈裟だよね。ま、こっちを守るためだからさ』


って、包帯の巻いてない方の足を指さした。



「折れてんの?」


『こんな見た目なのに折れてないんだな〜』


「ほんでも色々大変そうやん。あたしにできることあったら言うてや。さっきの子らより言いやすいやろ」


『あー、うん。ありがとう』


「里香にも言うてや!教室移動する時とか、おぶったるから」


『おー、頼もしいね。ありがとう』



その後、美術の授業で移動すんのに、岸野におんぶされてて、その姿に誰かとすれ違うたびに


「かわいい〜」

「赤ちゃんみたい」


とか言われまくって写真も撮られて
美術室に着いたときには
ムスッと口を尖らせて


『里香ちゃん、次はもういいから』


って、それこそ子供みたいな顔で言うから


「ははっ、かわいいなぁ」


って、つい、こぼしたら


『あぁ?なんか言ったか?』


って睨まれた。
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