ぼくがぼくになった日
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一体何時間エンジンを回し続けたのだろう。
今日はもうこの辺にしておこうと最後に寄った海辺に車を停めて、ボンネットに軽く腰かけた。
もうすぐ夜が明ける。
卒業オーディションの日に愛音が歌っていたバラードのあの曲を思い出して口ずさむと、少しだけ朝日を浴びた海が藍色に輝き出した。
ここだ。
ぼくがいつも夢に見ていた海。
間違いない!ここに愛音がいたはずなんだ!
なまえちゃんに知らせたい。
仕事が終わったら、車で迎えに行こう。そしてちゃんと謝らなくてはいけない。ぼくにはきみが必要だ。