ぼくがぼくになった日
□20
1ページ/1ページ
「嶺二くん」
「嶺二」
「さようなら」
「待って!ぼくも行く!」
ぼくの気持ちと同じく真っ暗な海。
何も見えない。
アイドルとして活躍すればするほど心は囚われていく。
光が強くなるほど影が濃くなるように、ぼくは黒く汚れていく。
水中で体をこすってもその黒は消えていってはくれない。
苦しい。
呼吸ができない。
助けて。
目を覚ますと30分も眠れていなかったらしい。
いてもたってもいられなくなり、車のエンジンを回した。
海へ。きっといつも夢で見るあの海は存在するはずなんだ。