ぼくがぼくになった日
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「ありがとう。私、そろそろ部屋に帰るね」
「あ、なまえちゃんちょっとだけストップ!」
クローゼットの中からオドロキマンの巾着を引っ張りだして見せると、中から飴の入っていた袋が出てきた。
「これ、なぁに?」
「なまえちゃんに初めてあげた飴の袋。記念だから」
「え!やだぁ!嶺二くんって変なコレクター?」
「初恋の記念。ごめん、自分でも気持ち悪いなって今あらためて思った」
リボンに包まれたプレゼントは、今しか出すタイミングがない。
「はい、これもらってくれる?開けてみて」
彼女は包みを綺麗にあけると、真っ赤なハートの指輪が出てきた。プラスチックでできているだとかそんな程度でしか覚えていなくて、よくよく見るとなんてちゃちなんだろう。
「わぁ。綺麗な色!これどうしたの?」
「さっきスケートの日の帰りの話してくれたでしょ?あの日、ちょっと待っててって言って、ぼくはこれを買いに行ったんだ」
「ふふ、ぼくのお嫁さんになってねって?」
「違うよ!って…言いたいけどそんな感じ……言わないけどね!?」
おもちゃの指輪は、彼女の細い指でも小指の第二関節ギリギリにしかはまらなかった。
「今、いつか薬指に本物をプレゼントするよって恥ずかしいこと言おうとしてたでしょ?」
「し、してないもんね…」
なまえちゃんはぼくのことをよくわかってくれている。時にドキッとさせられるくらいに。
なまえちゃんのことが大好きだ。これからも、ずっと。