ぼくがぼくになった日

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「嶺二くん!飴ちょうだい!」


あの日以来なまえちゃんはぼくを嶺二くんと呼ぶようになった。

子供の頃はれいちゃんと呼んでいたり、再会してからは寿くんと呼んでみたり、忙しいなぁ。




いつも通り中庭でみんなでお昼ご飯。
授業は難しいものも多いし、眠くなってばかりだけど、この時間を楽しみに毎日頑張っている。


「今日は一段と寒いね。もうすぐ卒業かぁ」


愛音が卒業オーディションの話を切り出すと、けーちゃんが負けませんからと珍しく闘士を燃やす。


愛音とけーちゃんがパートナーに。

ぼくとひびきんがパートナーに。

なまえちゃんはデビューが済んでいるから、学園長の計らいでなんと審査員側だ。


「それが終わったら、俺達バラバラになっちゃうのかな」


「まだそんなさみしいこと言わないでください」


みんなでデビューできればいい。それを全員が願っているのだから。



「ねえ嶺二、アイドルになったら、僕とユニットを組もうよ」


「愛音にはもっと才能がある相方がいそうなもんだけどなぁ」


「嶺二しかいないよ!だから絶対!約束!」


そうストレートに言われたら照れてしまう。愛音は目を輝かせてぼくと指切りげんまんをしてくれた。






卒業の日、オーディションは大盛況で悔いのない結果を残せた。
打ち上げだーとはっちゃけるひびきんに後で行くよと伝えて、もう1度だけ学園を見て回ろうと教室に戻った。





茜色のさす教室は、やけにさみしかった。
みんなが待っているからもう行こう、そう踵を返すと、そこにはなまえちゃんが来ていた。


「ここだと思った」


なまえちゃんの目が夕日に照らされて輝いている。



「1年間、いろいろあったよね」


「うん、ほんといろいろ」


「いつも隣にいてくれてありがとう。卒業できたのは嶺二くんのおかげだよ」


「ぼくだってなまえちゃんがいたから頑張れたんだ」


一年前に見た時よりも少しふっくらして女の子らしい彼女は、とっても魅力的で、僕の心をくすぐる。


「ねぇ、ブレザーでも第二ボタンってもらっていいのかな?」


「第1でも第2でもネクタイでも靴下でも全部あげるよ!」


「え、靴下いらないなぁ」


かわいいなまえちゃん。

あの内緒の日。

もう1回、ぎゅって抱きしめたい。
なまえちゃんの気持ちが知りたい。


「嶺二くん、卒業おめでとう」


「なまえちゃんも、おめでとう」


これからもずっと、君の隣にいてもいいのかな。
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