ぼくがぼくになった日

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昼過ぎ、愛音から電話があった。
今、男ばかり3人でいるのだけど一緒に遊ばないかって。


ぼくの店の従業員さんがお盆休みを取っていて出られないからと言うと、なんとみんなでうちまでわざわざ来てくれた!



普段はやらないような部分の掃除を手伝ってくれたり、商店街中のおじちゃんやおばちゃんが、今日はこれから何が始まるんだいと様子を見に来るほど。


お友達もご飯も食べて、なんなら泊まっていきなと母ちゃんが言ってくれたからみんなで小さな食卓を囲んで唐揚げの取り合い。大騒ぎした。


「まったく嶺二がいきなり彼女をつれてきたり、かと思えば賑やかになったり、学園生活が楽しいようでよかったよ」


「だから母ちゃん!まだ彼女じゃないってば!」


「まだ???」


家族、なまえちゃん、男3人のみんなの視線が集中して、それと同時にぼくがおおよそ考えていることが周りに伝わってしまった瞬間だった。


「さー、嶺二と寝たらキケンだからなまえちゃんは私と寝ようね〜」


姉ちゃんはなまえちゃんを引っ張って2階へ上がっていく。ぼくのいない間に小さい頃の失敗談なんかをなまえちゃんに吹き込んでるんじゃないかと思うといてもたってもいられなくなって、ぼくもみんなを連れて2階へあがった。


布団の枚数が足りずに、六畳間に3枚の布団をびっちり敷いて、4人で転がった。


隣の姉ちゃんの部屋から声が聞こえる度、何を話しているんだろうと耳をそばだるのに、気づけばみんなでこしょこしょ話。


「なぁ嶺二。お前の姉ちゃん美人だな。俺すっごくタイプ」


「えー!ひびきんやめときなって、無理無理!性格サイアクだよ!」


「だって寿君はなまえさんが好きなんですもんね」


「けーちゃんまで!」


「実は僕もお姉さんちょっとタイプだったりするよ、明るくて、とても綺麗な人」


「愛音まで!?」


男の子同志の夜は長い。
くだらない話をして、最終的には将来の話をした。

ひびきんは作曲家として、海外へ渡りたい。

けーちゃんの夢も作曲家。

全然違うテイストの曲を作るふたりではあるけれど、互いに刺激しあって成長したいなんて話していた。

愛音はぼくと同じくアイドルコース。色が白くて、吸い込まれそうなほど綺麗な青い瞳。背も高くて、ぼくも憧れるような容姿をしている。
それなのに愛音はいつも、嶺二は心が優しくて誰よりもアイドルに向いていると思う、だなんて言う。



人の出会いはいつも不思議だ。

たった16年しか生きていないけれど、今ぼくには、信頼できる友達がこうやってたくさんいる。

ありがとう。おやすみ。
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