☆薔薇遊戯☆【三兄妹物語り】

□2☆薔薇遊戯☆
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☆薔薇遊戯☆


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「りゅうえーーーーんっ!?こーりーーーーーんっ!?どこーーーーーー!?」


半地下になっている収納庫に、
入ってきた時にはもうすでに、年子の兄は半泣きだった。

その様子を、つづら の隙間からうかがう、柳娟と康琳。


「ここーーーーーーっ!?」

ぱかり、と、手の平大の箱の蓋を開ける。


(なんでだよっ)


つづら の中から、心の中でツッコむ柳娟。
箱の中には、刺繍糸が入っていた。


「ここーーーーーーっ!?」

ぱかり、と、別の手の平大の箱の蓋を開ける。


(なんでだよっ)


つづら の中から、心の中でツッコむ。
箱の中には、釦(ボタン)が入っていた。


「どこーーーーーーっ!?」

下がり気味の目の端に、今にも零れ落ちそうな涙を浮かべて、
きょろきょろと、半地下の収納庫の中を見渡す呂候。

「まさかこの、なんの変哲もない つづら の中ってことは、いなだろうし……」


(なんでだよっ)


「まさか─────………誘拐─────………?!
こんな探しても見つからないなんて………。
………なんで、柳娟と康琳だけなんだよーーーっ?!
僕も一緒に誘拐されるよーーーーーーっ!
誘拐犯さーーーーーーーんっ!!」


(なんで誘拐犯の方、呼ぶんだよっ!父さんか母さん呼べよっ!誘拐ならっ)


つづら の中から、ずっと心の中でツッコむ柳娟。


「りゅうえーーーーんっ!こーりーーーーーんっ!うわーーーーーん!!」


下がり気味の目の端から、大粒の涙をぽろぽろと零す呂候。


「あーあ。呂候兄様、泣いちゃいましたわ」

「…ったく」


ぱかり、と、なんの変哲もない つづら の蓋を中から開け、
姿を現した柳娟。と、康琳。


「あっ!?柳娟!康琳!今まで、どこにいたんだよ!探したんだよ!?」

「探せよっ」

「ずっと、ここにいましたわ♡」

「なんで、呼んでも出てきてくれないんだよっ!?
誘拐されちゃったかと思ったんだよ。連続未成年者略取誘拐犯に」

「こえーよ」

「かくれんぼだからですわ♡」

つづら の中から出てきて、柳娟と康琳は言った。


「うわーーーーーんっ!!」

「泣かないで、呂候兄様」

「うっ、うっ、うっ、心配したんだよ。二人とも大丈夫?」

「それは、こっちの台詞ですわ♡呂候兄様♡大丈夫?」

「うん、大丈夫。柳娟と康琳が大丈夫なら、早くかくれんぼの続きしようよ」

「それもこっちの台詞ですわ♡呂候兄様♡
呂候兄様が大丈夫なら、かくれんぼの続き、しましょ♡」

「うっ、うっ、うっ、もう、大丈夫」

「…ったく」

遊びで泣く兄に、もう一回、鬼をやらせるわけにもいかない。


「じゃあ、次 僕が─────」

「はーい♡次、あたしが、鬼ーーーっ♡いーち、にーい」


さーん、よーん、と、
小さな両手で両目を隠し、数を数え始めた康琳。


柳娟は、半地下になっている収納庫を出て、走り出した。

可愛い鬼が来る前に、隠れる場所を探す。

その後を、兄が追う。


to be continued…


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