☆人魚姫遊戯☆
□四☆人魚姫遊戯☆
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「その前に、おかわり、頂戴♡」
康琳は、窓側の椅子に座り直すと、空いたグラスを渡した。
幻狼は、また、同じモノを、ふたつ、作り、ひとつ、渡す。
「ありがとー♡」
幻狼は、また、壁側の長椅子に腰を下ろした。
それから、ぐびり、と、それをあおる。
「お前、名前は?」
「柳娟」
「柳娟」
「なあに」
「お前、王子様に会うために、人間になったんか?」
変な顔で、柳娟のことを見る。
そうよ?と、なんで?と、幻狼のことを見る。
「決まってンじゃない。
一度陸に上がったら、もう海には引き返せない、
それが人魚の宿命なんだから」
物憂げな瞳で幻狼を見る。
「王子様を一目見たくて、
王子様がどんなお方か、ずっと想像してたわ。
顔、声、瞳の色、好きな食べ物、家族構成、性癖……」
キッ、と、幻狼を見る。
「いーい!?
王子様に、あたしのこと、
どこにあるのか誰も知らない国から
7つの海を越えてやってきた、
美人でおしとやかで慈愛あふれる、
世にも可愛くて美しいお姫様ですって紹介するのよ!!
そして、アタシは初夜で王子様を、お・と・す♡
完ペキな作戦だわっ」
「勝手やな、お前」
呆れ顔で言う幻狼。
(なんか、酔っぱらってきたわ)
(なんか、酔うてきたわ)
はーあ、と、ため息交じりに言う柳娟。
「せっかく、王子様が落ちてきたと思ったのにぃ。
落ちてきたのは、幻狼、あんたなんだもん。
……そーいえば、幻狼、あなた、なんで、海に落ちてきたのぉ?」
柳娟は、少し赤い顔で問うた。
「………船に酔うたんや」
幻狼は、少し赤い顔で答えた。
「山賊の頭になるよーな男が舟酔い!きゃはははは」
柳娟は、目に涙を浮かべ、笑い声を上げる。
幻狼は、………と、一拍置いてから、続けた。
「歌がな、聴こえた気がしたんや。
船に酔うて、外の風に当たろ思て、甲板に出たら、
なんや楽しげな、でもどこか切なげな、オンナやろな、歌声が聴こえたんや。
でもー、こんな、真っ暗な夜の海のどこかに、女なんておるわけないー思て。
……潮騒か、海鳴りか」
「きゃはははは」
「その正体が知りたあて、ついつい、海を覗き込んでしもたんや。
したら、そのまま、ドボン、や」
「山賊の頭になるよーな男が舟酔いっ!ぎゃはははは(笑)!!」
「まだ、笑うか?」
はーあ♡と、目に浮かんだ涙を白く細い指で拭う。
(はーあ♡なんか酔っぱらっちゃった♡)
柳娟は、籐の椅子に座っているのが疲れたのか、
寝台に移動すると、枕元側にもたれに座り、
空になったグラスを、幻狼に向けて差し出した。
「幻狼、おかわりっ♪」
「ん」
幻狼は、差し出されたグラスを受け取ると、
同じモノを、また、ふたつ、作り、ひとつ、柳娟に手渡すと、
その間を、行ったり来たりするのが面倒くさくなったのか、
寝台の足元側にもたれて座った。
(あー、なんか酔うたわー)
幻狼は、ぐびり、と、酒をあおると、
目の前にいる、人間の姿をし、女のナリをして、
泣きボクロのある顔で笑っている、男のことを見た。
美しい長い髪を、水に映る月ように、ゆらめき光り輝かせ、
水色の帯で蝶々結びを前でし、袖と胸元がひらひらした、
桜貝色の丈の短い衣装の裾からは、すらりと伸びたおみ足がのぞく。
幻狼は、下半身が熱くなるのを感じた。
「でねっ、海の魔女に、『100本くらい頂戴よ?』って言ったら、
『お前、人間でもそんなに何回も人間に生まれ変わらないぞ』ですって〜(笑)
おほほほほ〜♡
生まれ変わるなら、絶対に人間がいいと思わない?
それも、美人な女の子♡その美貌で一国を傾けるようなっ♡
ねェ、きいてる?!」
「……柳娟、お前、王子様に捧げるんか?処女<ヴァージン>」
幻狼は、すらりと伸びたそのおみ足に、手を伸ばす。
「ん?とーぜんでしょ。決まってンじゃない。
その為に、足を手にして、本物の人間になったんだから。
ん?」
伸ばしたその手が、白く細い足首を掴む。
(ん?)
白く細い足首を掴んだその手が、くるぶしからひざ下までを触る。
(………ん?)
くるぶしからひざ下までを触る手が、膝に触れる。
(ン………)
膝に触れる手が、ひざ上から太ももを撫でる。
(………ン)
太ももを撫でる手が、桜貝色の丈の短い衣装の裾の中へと、伸びる。
「………ンッ」
小さな声を上げた柳娟。
柳娟は、下半身が熱くなるのを感じた。
(ン、、ンン、、ン……、ンンッ)
(ん……、だめ……、感じちゃう………)
(でも、お酒のんでるから、大きくならないかも………、
あ、大きくなっちゃった)
桜貝色の丈の短い衣装の裾の中で、
上下する幻狼の手に、下半身の熱が増す。
「ン、、ンン、、ン……、ンンッ」
小さな声を上げながら、
白魚のような指で、幻狼の両頬に触れる。
それから、その唇に、自分の唇を、押し当てて、
2度目の、ファーストキスをする。
「………ッ」
声を押し殺した幻狼。
(やわいな………)
(感じてまうわ………)
(でも、酒のんでるから、大きならんかもな………、
あ、大きなったわ)
舌を入れ込んだ幻狼。の、舌に、舌を絡ませる柳娟。
口の中で、絡まってはほつれ、ほつれては絡まる、
やわらかい柳娟の舌に、下半身の熱が増す。
「…ン、、……幻狼…」
小さな声で、その名を呼んだ。
「……ッ………柳娟…」
と、その名を呼び返す。
38度と17度と17度の酒に、上がった体温。
to be continued…