☆短編小説☆

□☆136号線遊戯☆柳宿×翼宿
1ページ/4ページ

#1



「海が見たい」

真夜中も少し深まった頃。
丁度、深夜ドラマの本編が終わり、
次回予告をまたぐCMの間に、柳宿は言った。

「なんも見えへんやろ。真夜中の冬の海なんて」

「誰も見たことがない、海が見たい」

「前も行ったやん。夜の海」

次回は、某コリアンタウンで昼飯にするらしい。

「月の道が見たいー、言うて。
年に一度しかないー、言うとったけど、
よう考えたら、月に一、二回はあるやろ、満月なんて」

もう騙されへんで、と言う感じで、翼宿は言って、
リモコンを手に、ザッピングをする。

「あれはストロベリームーン!年に1度しかないのっ」

満月が、月に二回あるブルームーンには触れず、柳宿は言う。

「朝焼けに、イチゴ色に染まる海が見たーい♡」

苺、苺、お前は、新人アイドル歌手かっ、と、
文句言いつつ、TVを消し、キーを手に、車を出す。







エアコンをつけ、カーステレオのヴォリュームをいじる。
カーナビに、目的地は設定せずに、東へと、車を走らせる。


深夜ラジオから、リスナーからのリクエストにこたえた曲が流れる。

「あ、この曲、好き」

深夜ラジオから、リスナーからのリクエストにこたえた曲が流れ始め、
柳宿は、カーステレオのヴォリュームを少し上げた。
流行りの女性歌手の曲に合わせ、揺れるマリーゴールドのように、歌う。

「この歌手、菅田将暉にも楽曲提供してるのよ」

「ふ〜ん」

翼宿は、青信号が黄色に変わり、赤信号になる前に、
スピードを上げるように、アクセルを踏み込んだ。 

「あ、この曲、好き」

リスナーからのお悩み相談のあと、
流れてきた、定番の恋愛ソングに合わせて、歌う。

「あぁ♡逢うべき糸に出逢えることを、人は仕合せと呼ぶのね〜♡」

「ふ〜ん」

深夜の国道。車通りの多くない道を、車線変更せず、走る。

「あ、この曲、好き」

最年少でグラミー賞を主要4部門を含む5部門を受賞した、
流行りの洋楽が流れ、それを歌う。

「この歌手、PVで鼻血流してるのよね」

「お前、嫌いな曲、あるん?」

そのまま、下の道をゆく。



to be continued…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ