☆短編小説☆

□☆お飯事遊戯(おままごとゆうぎ)☆
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☆お飯事遊戯(おままごとゆうぎ)☆
学校法人朱雀幼稚園。お遊びの時間。


【1】


「お帰りなさぁ〜い♡
先に、ご飯にする?お風呂にする?

それとも、ア──────────



ン・パ・ン・マン、おしゃべりいっぱい!
ことばずかんデラックスに、するぅ?♡」

「ん?ああ、後でよい」

「今日は、オイラが先手なのだ」

「わたしが、後手だな」

「お仕事ご苦労様でした♡
すぐに、ばんしゃく の準備いたしますわね♡
おビール、お持ちいたしますわ♡」

ピンク色のピクニックシートの上から、
一旦、降りて、おままごとセットの中から、
ビールに見立てた、おもちゃの麦茶瓶を手に取る。

「なにしとん?」

「ンフフ♡
向こうで、彩貴帝クンとおままごとしてンの♡
これから、夫婦の時間なの♡」

「お前ンちの、夫婦の時間、僧侶おるやん



もごッ─────!!?」

「は〜い♡ ばぶちゃんは、ミルクの時間ですよ〜♡」

おもちゃのミルク瓶(滅菌済み)を口につっこむと、
そのまま、ずるずると、力ずくで、
ピンク色のピクニックシートの上に、引っ張っていく。

「オレ、向こうで、攻児たちと、
野球、しよー、思っとったのにっ!?」


【2】


将棋に興じる井宿と星宿様。
プラスチックのコップに、おビールを注ぐフリをする柳宿。
ミルク瓶を、咥えさせられている翼宿。
4人で、ピンク色の折り畳み式の小さなおもちゃの机を囲む。

「銀冠穴熊」

「居飛車穴熊、なのだ」

「今日ね、ばったり、西の城壁の上で、誰に出くわしたと思う?
そうなの!あの人!切れ長の目の。ルビー色の髪した。
左太ももに『房』の字のある」

「矢倉中飛車」

「ゴキゲン中飛車、なのだ」

「それでね、『いいわね、あなたのご主人様は。
カッコよくて、優しくって、生まれながらの勝ち組で、
うらやましいわ』ってゆーから、言ってやったの。

ごめんなさいね〜♡どこからど〜見ても、お似合いの夫婦でッ♡って」


パチンッ


「王手、なのだ」

「待った!」

「待ったなしなのだ」

「おほほほほ〜♡」

「夫婦の会話、成立してないやん」

「ねえ、あなたぁ♡今夜あたり、二人目、作りましょうよぉ♡
この子の将来は、もう、あきらめたから」

「あきらめたるなや。ちゃんと育てぇ。ホーニンシュギか。
ホーニンシュギってなんや」

「ほらっ、ジョン!騒がないの!ハウス!」

「次は、白黒つけようではないか」

「白黒勝負。望むところ、なのだ」


【3】


オセロに移行する井宿と星宿様。
プラスチックのコップに、おビールのおかわりを注ぐフリをする柳宿。
骨型のおもちゃ(除菌済み)を、与えられる翼宿。
4人で、ピンク色の折り畳み式の小さなおもちゃの机を囲む。


「ほら、あの女(ヒト)、
ちょっと、意地悪ってゆーか、性格が悪いってゆーか、
口が悪いとこ、あるでしょ?自分が不毛な恋だからって」

「オトコのお前より、全然、フモウちゃうけどな。フモウってなんや?」

「根はいいコなんだけどぉ、遊女のサガってゆーかぁ」

「アソビメってなんや?」

「根はいいコなんだけどぉ、夜鷹の習性ってゆーのぉ?」

「ヨタカってなんや?」

「『他所に、オンナ、作ってないか心配ね。お気の毒様♡
だけど、惚れたモン負けね。ご愁傷様♡』ってゆーから、言ってやったの。

あ〜ら、浮気が男の甲斐性なら、
いつその浮気から帰ってきてもいいように、
きちんと身支度整えて、ご飯とお風呂準備して、
三つ指ついて待っているのが、妻の甲斐性よ♡ってね。
それに、浮気なんて、するわけないじゃない。うちの人に限って。
だから、心配してないわ♡全ッ然♡って。

お〜ほほほほ♡」

「そのカド、待った!」

「待ったなしなのだ」

「もう3つも、カドを取っているではないか!
こういう時は、気をきかせ、
ひとつくらいカドを譲るのが道理ではないか?」

「関係ないのだ」

「私の祖父は、この学校法人朱雀幼稚園の創設者だぞ!?」

「関係ないのだ」

「けけけっ(笑)
自分が アイジン やった言うんがオチや〜〜」


バチン─────ッ!!!


「あいたーーーーー!!?
なんで、幼稚園帽のゴム、ばちん、すんねんッ!?」

「もうっ、隣ご近所さんの、お婆ちゃんの弟のイトコの息子は、
他所の夫婦間の問題に、口、出さないでちょーだいッ」

「オレ、何役やねんッ!?」

ピンク色のピクニックシートの上で、
ピンク色の折り畳み式の小さなおもちゃの机を囲み、
ぎゃあぎゃあ、ワイワイ、わちゃわちゃ、と、騒ぐ4人。
プラスチックのコップは倒れ、
骨型のおもちゃは投げ出され、
オセロの石が白も黒もなく転がる。


☆つづく☆
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