☆短編小説☆

□☆同室遊戯☆
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□北甲国。
市街地、特烏蘭に入る前夜の出来事─────。





(ん?)

眠りについて早々、
毛布を引っ張られる感覚に、翼宿は目を覚ます。

「…なんやねんっ!?」

眠気まなこで、自分を起こした相手を見る。

「寒いのよぉ」

自身の寝台から起き出してきた柳宿が、
こちらも、眠気まなこで、そう言うと、
するり、と、翼宿の毛布の中に潜り込んできた。

背を向ける翼宿の背中に、
ぴったりとくっついてくる柳宿。

「あったかい♡」

(……たしかに)

「くーーーーーーーー」

「くーーーーーーーー」

すぐに、眠りに落ちる、翼宿と柳宿。







夜明け前、腕が抱くものの違和感で、
翼宿は目を覚ます。


(……ん?)


「!?」


腕の中には、気持ちよさそうに眠る、髪の長い美女………、
いや、髪の長い、美男子。

いつの間にか、胸の中に抱き寄せていた、
男なのか女なのか、よぉわからん、
そのよく見たことのあるようで、
はじめて見るようなものの存在に、
しばらく事態が飲み込めず、
ただ、漠然と、その寝顔を見つめた。


(そぉかぁ…)


幸せな夢を見ているのか、
その寝顔を見ているうちに、
次第に、なんとなく、今までの、色々なことが思い出される。

しかし、向こうが寒さで滑り込んできたのか、
自分が温もりを求めたのかは、わからなかった。

翼宿は再び目を閉じ、
丈の短い、寝巻からのぞく足を想像し、
柳宿の細い足首を、自身のふくらはぎの間にはさんで温める。


朝が来れば、

「あー♡あったかかった♡」

と、

いつもの笑顔で、
何事もなかったかのように起きてきて、
(実際、何事もなかったのだが)

コッチが、

「寝にくかったわぁ」

と、文句を言えば、

「寝台がせまかった」

とか、

「毛布を引っ張り過ぎ」

とか、

勝手に人の寝床に潜り込んできた自分のことは棚に上げ、
倍にして文句を返してくる姿がありありと瞼の裏に浮かび、
翼宿は、フッ、と鼻で笑った。

明け方が、一番冷える。

もう一度、抱き寄せ、もうひと眠りする。











穏やかな気候の紅南国の地に、白い使者が舞いおりる。


「ん?」


頬に当たる、冷たいものに、翼宿は空を、見上げる。


「雪かぁ………」


あれから、数年経った今でも、
雪が降ると、なんとなく、あの夜のことを思い出す翼宿であった。


おわり



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