☆月遊戯☆

□ 【※】第四章☆月遊戯☆
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☆月遊戯☆


第四章


強気で、勝ち気で、負けん気な、この目が、

(かなわない)

と、分かったら、今度は、
幻狼の腰に、抱きついて、
幻狼の肩に、しなだれかかり、
形のよい歯で、右の耳たぶを、
かぷり、と、やわく噛み、
小さな舌の先で、その耳の縁を、
ぺろり、と、舐めた。
左の耳たぶと、その縁にも、
同じことをした。


「……昼間のこと、まだ、怒ってるの?」

「……なんで、そう思うん?」

「いつも、こんなことしないじゃない」

「お前、いつもと違うこと、好きやん」

柳娟は、幻狼の右の耳に唇を寄せる。

「コレ、はずしてくれたら、
ウサギが売りにきた おもち、分けてあげる」

悪魔の囁き。

「悪ないナァ」

と、幻狼。

「コレ、はずしてくれなかったら、浮気する」

悪魔の選択。

「誰と?」

「誰とが、嫌?知らない人と、知ってる人と」

「どっちも、アレやなぁ。
でも、知らんヤツの方がマシやな。
知っとるヤツよか。知らんで済む分」

「じゃあ、あんたの知ってる人と」

悪魔の微笑。

「コレ、はずしてくれなかったら、浮気する」

柳娟は、幻狼の左の耳に唇を寄せる。

「あたしの気持ち、わかってるでしょ?」

天使の声で言う。

「あなたと、同じ気持ちよ」

いつもなら、敵わない、その声が、
いつもなら、叶わない、ことはなにもない、その声が、
いつもと違って、逆撫でる。

柳娟は、幻狼のモノに右手を伸ばし、
髪紐の巻きついた自分のモノを合わせると、
自分のモノと、幻狼のモノ、束ねて、しごく。

「もう、こんなになってる」

天使の悪戯。

「ン、、ンンッ、、気持ちいい……、あ、あン」

天使の喘ぎ声。

「ね?幻狼、気持ちいいでしょお?」

「ああ」

「ね?一緒に、気持ちよくなろ?ね?」

天使の誘惑。

「出そうや」

「コレ、はずしてぇ?
お口でしてあげる。全部、飲んであげる。
最後の一滴まで、いつもみたいに飲み干して─────」

「あ、出る」

「キャッ!!?」


その刹那、胸にかかった液体は、
胸を貫かん、白い矢の如し。

柳娟の胸を、白く、汚した。

わずかにだが、あご にかかる。


「出してもうたわ」


強気で、勝ち気で、負けん気だった、その目に、
怯えと、震えと、いままで見たことのない色が滲む。


「─────いつも、そんなこと、しないじゃない」


怯えと、震えと、後悔の色が滲む。

その姿、狼に睨まれた、白兎の如し。


第四章<完>


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