☆月遊戯☆

□【※】第三章☆月遊戯☆
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☆月遊戯☆


第三章

ファ〜ア、と、大きな欠伸を、ひとつすると、
柳娟は、鏡台の前の椅子に腰を下ろした。

幻狼は、寝台に腰を下ろした。
鏡の中の、柳娟のことを見る。
鏡の中でも、柳娟は目を合わさない。

髪紐をほどくと、
編み終わりの方から、するする、と、ほどけ、
真ん中らへんで、止まった。

手櫛を、編み始めの方に通し、軽くゆすると、
上から、するすると、三つ編みは、下まで、ほどけた。

柳娟は、髪を とこう と、つげ櫛に手を伸ばした。
二度、三度、…五度、六度、と、櫛を入れる。

幻狼は寝台から立ち上がり、
柳娟の白い手からつげ櫛を取り上げる。

代わって、二度、三度、…五度、六度、と、
その、天使の輪を作っている、健康的で、艶やかで、豊かな美髪に、
櫛を入れていると、櫛の角度が悪かったのか、

「いたい」

と、柳娟が声を上げ、鏡越しに、幻狼の目を見た。

「すまん」

天使の輪の、痛がった個所に、口をつける。

椿の香りがする髪に唇を滑らせて、右のうなじに吸い付く。

「ア」

右肌を粟立たせ、鏡の中で、天使は声を上げる。


幻狼は、寝巻の合わせから手を忍ばせ、柳娟のモノを、握る。

「はっ、んっ、ああっ」

「気持ちええか?」

「う、うん、ハァ」

椿の香りが、濃さを増す。

「あぁ、そこぉ、もっとしてぇ」

幻狼は、手を引いた。


「なあ、髪紐、貸してえな」

「うん?」


不思議そうな顔で、しかし、抗うことなく、
藍色の髪紐を、幻狼の、広げた手の平の中に、落とす。


髪紐を右手に、
左手で、柳娟の体を引き寄せると抱え上げ、
寝台まで運んで行き、やや粗野に転がす。
軽い体が、寝台の上を、二度、ころころと、転がったのを、
幻狼が、また、腰を引き寄せて、抱き起こす。
不思議そうな顔で、されるがまま、寝台の上に、内股で、座る柳娟。

半ダチの、柳娟のモノに、幻狼は、
髪紐を、ゆとりをもたせて巻き付けて、
もう一かけ、出来そうなところで、
髪紐の先と先を、固結びで結んだ。


「なに、これ?」


巻き付けたままのモノを右手で握り、上下さす。


「あっ」

声を上げる柳娟。

「あっあっあっ」

柳娟は声を上げる。


「ン、なに、これぇ?あっ」

「まだ、軽くこすっただけやないか。
この見た目に、興奮したか?そんななると、キツなるで?」


幻狼の言う通りだった。
半ダチから、本ダチになり、髪紐が、みるみる食い込んでゆく。

「やだ、きつい、ほどいて」

「固結び、してもうたからなぁ」

結び目を、ほどくフリして、計算か偶然か、十中八九、偶然か、
境目に、当たった結び目を、くいくい、と、親指と薬指で、いじる。

「アアッ、それッ、しないでっ」

「しろ、ゆーたり、すな、ゆーたり」

右手の、親指と人差し指で作った輪を、上下する。

「アッ、アッ、アッ」

柳娟は、声を上げ、

「アッ、ほどいて、あんっ、、もう我慢できない、ああっ」

幻狼の左腕にしがみつく。


「イッ、イッ、ああっ、イクッ、、アッ、アッ、イけないッ、

ああっ、またぁ、、あ、ダメェ、あ、またっ、ああっ、イッ、、ああっ、

ダメッ、アッ、また、イけそうっ、キタッ、、ああっ、イけないっ、あっ、ああっ、

あ、あっ、イッ、、!!」


左腕にしがみついたまま、
色のない涙を、自分のモノから、とろとろと、滴らせる。


「イッたか?」


しばらく、その無色の快楽に、全身の震えが治まるのを待って、
幻狼は柳娟に、話しかける。


「ハァ、……わかるでしょ?」

「なんや?」

「ハァ、もう、十分、楽しんだでしょ、ハァ」

「はずしてもらえると、思たか?」

「あたしも楽しんだから。もう、十分」

「まだやで」

「本当に、ほどいて」

「イッたやん?」

「ちゃんと、イかせて」

「イけたやん?泣いてるみたいで、色っぽかったで?
さすが、泣きボクロ、あるだけのこと、あるなぁ」

「冗談はヤメテ」

「お前、嘘とか、冗談とか、ジョークとか、好きやん」

「今は、嫌い」

「都合、えーな」


強気で、勝ち気で、負けん気な、その目を向けられると、
全身を、火で焼かれたように、熱くなる。
強気で、勝ち気で、負けん気な、その目を向けられると、
全部を含める一部を、火で焼かれたように、熱くなる。
結局、涙もろくて、涙目になられても、
泣きはらした、兎のように赤い目なんて見たくなくて、
是が非でも、なんでも、望みを叶えてやりたくなる。いつもなら。


「えーで。自分で、はずしても」

「………」

「それは、嫌なんかい」


第三章<完>


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