☆ご指名遊戯☆【翼宿side】

□E☆ご指名遊戯☆
1ページ/1ページ

☆ご指名遊戯☆

E

「琳琳<リンリン>でーす♡」

今や遅しと神秘の幕が上がり、姿を現した女神様。

赤地に金の鳳凰が刺繍された、ノースリーブの丈の短いチャイナドレス。
スリットからのぞく、すらりと伸びたおみ足が眩しい。
細い腰に、主張しない胸。

三つ編みを、右耳の後ろでひとつにまとめたお団子に、
あしらった赤い花飾りが、なんとも愛らしい。

親しみやすくも、気品ある雰囲気をまとい、
30度のお辞儀と共に舞い降りた天使が、その顔を上げた。


「ん?」

翼宿は首をかしげる。


「ん─────!?」

まじまじと、目の前に舞い降りた、
左目の下に泣きボクロのある、天使の顔を見る。


「……なんや、この顔にはイヤというほど覚えが……」

女は、笑顔を絶やさない。

「ん?リンリンちゃん、知り合いかなにか?
チェンジする?NGにしとく?出禁にする?」

こそっ、と、リンリンに耳打ちする店長。

「いーえー♡」

リンリンは、タレ目がちの目を細めて、ニコニコと、
笑顔を絶やさず、否定する。

「いやーねー♡お客サンッたらっ♡
こんなビジン、この世にふたりといるワケないでしょ!?
早速、口説いてきちゃってッ♡もうっ♡手も気も早いんだからッ♡
おほほほほ♡」

口元に、小指を立たせた手をやって、高笑いをする女神。

「ん〜、このぉ、図々しくも、実力に裏付けされたァ、この感じぃ〜」

見れば見るほど、浮き彫りになる、既視感。

「さ、さ♡お部屋に参りましょッ♡うみへびの間、ご案内しまーす♡」

翼宿の腕に自身の腕を絡ませ、ぐいぐい、と、
有無を言わさず、引っ張ってゆく。

「ハイ♡コチラになります♡そのままどーぞ♡」

リンリンは、仕切りの布を、シャッ、と、開けると、
翼宿と共に部屋の入り、また、シャッ、と、仕切りの布を閉めた。

「お外、寒かったでしょう?お部屋、寒くない?」

「ん?ああ……」

「はい、おしぼり、どーぞ♡」

「あ、ども…」

「お着換え、お願いね。脱いだ服は、その籠に入れてね。
貴重品は、そこ。鍵、かかるから。
鉄扇は、そこらへんに、立て掛けといて」

「あ、ハイ…」

「全て脱いだら、施術台に、うつぶせでお待ちくださいな♡
腰に、タオル巻いてね」

翼宿に、綺麗に三つ折りに畳まれた、焦げ茶色のタオルを手渡す。

「この、テキパキとー、無駄のないー、世話焼きな感じはー」

「じゃ、あたし、香油の準備してくるから♡
一度、部屋を出るわね。準備、お願いね」

リンリンは、一度部屋を出る。

翼宿は、服を全て脱ぎ、脱いだものは籠に入れ、
焦げ茶色のタオルを広げて腰に巻いた。

それから、貴重品の類を金庫に入れ、鍵をしめ、
金庫に入りきらなかった鉄扇は、部屋の端に立て掛けた。

そして、顔の部分に穴の空いている施術台、うつぶせになった。

「準備できたぁ?」

ちょうど、穴から顔をのぞかせたタイミングで、
仕切りの向こうからリンリンが声をかける。

「ああ」

「じゃ、失礼しまーす♡」

シャッ、と、仕切りの布がめくられる。

「お待たせいたしましたぁ♡」

シャッ、と、仕切りの布がしまる。

「では、マッサージ、始めていきますね♡よろしくお願いしまーす♡」

「ん」

施術台に、空いた穴から顔を覗かせたまま、返事をする。

「じゃ、上、失礼しまーす♡」

リンリンは、施術台の上に乗ると、
焦げ茶色のタオルを巻いた、翼宿の腰にまたがった。


「あーーーーーーーーーーーー!!?」


うみへびの間で、翼宿は大声をあげる。


「お前ッ──────────もごっ!!?」

翼宿が、施術台に空いた穴から上げた顔を、
リンリンが、空いた穴に押し戻す。

「はーい、他のお客様もいらっしゃいますので、
騒がないでくださいねー、バカみたいにー」

「その顔ッ!?その声ッ!?その口調ッ!?
思い出したっ!!お前ッ、柳宿やろっ!!?」

もごもご、と、施術台に空いた穴から顔を覗かせたまま、言う翼宿。



次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ