☆ご指名遊戯☆【翼宿side】

□A☆ご指名遊戯☆
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☆ご指定遊戯☆

A

「大変お待たせいたしております」

怪しい笑顔の男が、待合室に戻ってきた。

部屋の準備でも整ったのかと思い、

「おー」

と、椅子から腰を上げようとしたが、

「大変お待たせいたしております」

と、怪しい笑顔の男はまた言って、翼宿の正面で片膝を付き、

「お、おおー」

と、翼宿は上げかけた腰を、再び椅子に沈めた。


「本日は、ご来店、誠にありがとうございます」


男は怪しげな笑顔は絶やさずに、仰々しく言い、
サラのカルテを手に、客人に問う。

「ご指名は、ございますか?」

「指名ぃ?!」

予期せぬ質問に、翼宿は思わず頓狂な声を出した。

「おらん、おらん。誰でもえーから、腕のイイ奴、頼むわぁ」

自分の右肩を、自分の左手で揉みながら翼宿は言った。

すると、男は、怪しげな笑顔を、怪しげな困り顔の変え、

「お客様、大変申し訳ございませんが─────

当マッサージ店、
お客様、お一人おひとりの運命に見合った女神を、
お付けすることをなによりのモットーとしており、

テキトーな女神を付けることを、
なによりの御法度としているゆえ─────、

まして、常連様のご紹介のお客様となりますと、
コチラといたしましても、
最高級の女神で、最上級のおもてなしを─────、はい。

………どのような女神がお好みか、
お聞かせ願えませんでしょうか?」

と、言った。

「あ、女神って、お客様のお相手をする女の子のことでございます、あ、はい」

「………」

「おありでしょ?これだけは譲れないっ!て、いう、女神の条件」

「ないわ、そんなモン」

「またまた〜☆」

(なんやこの店長。店長か?)

しかし──────、

郷に入らんば穴二つ、みたいな、
格言だか標語だかがあった気がする。※ない

それに、せっかく紹介してくれた攻児の好意を
ムゲにするのも本意ではない。

しかし──────、

「おありでしょ?これだけは譲れないっ!て、いう、
女神の条件の、ひとつや、ふたつや、みっつや、よっつ」

「ないわ」

「またまた〜☆」

(しつこいのぉ〜)

「しつこいのぉ〜」

一癖も二癖もある、雇われなのかなんなのか、
店長なのかなんなのか、なにもかもが怪しげなこの男。
この際、女神の条件に、無理難題を吹っかけて、
その怪しげな笑顔を、怪しげな困り顔から、
もっと怪しげな困り顔に変えてやるのも、おもろそーや。

と、親友の攻児への恩義も一瞬で忘れて、翼宿は思った。

(そー、やすやすと、女神サマなんておってたまるかぁ)



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