☆制服の恋人遊戯☆

□B☆制服の恋人遊戯☆
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♡制服の恋人遊戯♡

B

一回きりではなかったことは、
カラダの良さのなせる業。

後宮の本物の女ですら、
生涯一度もお手付きなく、
尼のような生活を送ることを余儀なくされたり、
同性同士の愛欲に目覚めてみた挙句、
皇帝が亡くなれば、
ついでに処刑されたりで、
うっかり、村で一番、市街で一番、都で一番、
美しい顔を持って生まれたせいで、
それ以外を持って生まれたオンナたちより、
禁欲でも解欲でも、
ドッチもドッチな、
一生涯に幕を閉じることも、
そう稀なことではなかったのに、

なにより男なのに、呼ばれるのは、

(まあ、後宮の、どのオンナより、
アタシのほーが美しいからとーぜんだけどぉ)

と、事実は事実として受け止めつつ、
埋まらない虚無感は、
はぁ、と、してみても、ぬぐえない。

「はぁ」

ここ数日の、泣きボクロ下の、目下の悩みを引きずって、
重い足取りで、さしたる目的もなく、宮廷内の廊下をゆく。

「お、柳宿、さえない顔して、アノ日かぁ?」

「そーよ。5回目よ」

(そんな、月、何回もあるモンなんかー。知らんかったー)

月でも星でも、この世の周期をなんっも知らない翼宿と別れ、

「柳宿」

と、虚無の源である、星宿様に呼び止められれば、

「………はい」

と、少し、ツレナイ返事をするつもりだったのに、

「はい♡」

と、語尾も目もハートマークで応えてしまうのが、
元来の、一途でサービス精神旺盛で、
自己犠牲をいとわないタイプの、オンナの性(さが)。

結局、いつ何時だって、
好きな人の、涼しい瞳に映るのが目的で、廊下をゆき、
お声が聞ければ、振り返り、
お声がかかれば、キュン、と、カラダは、疼いてしまう。

「部屋で待っているように。よいな?」

「………はい」

と、ちっともよくないお返事をするつもりだったのに、

「はい♡」

と、いいお返事をしてしまう。

翼宿が見た柳宿の姿とは一変、
羽根のように、軽い足取りで、
皇帝陛下の部屋にゆけば、
寝台の上には、見慣れた、というよりは、
着慣れた、衣装とリボン。

「はいはい。
コレに着替えて、お団子頭で待ってろってことね」

柳宿は、ひとりごちる。

「なーんで、女の美朱より美しいこのアタシがっ」

自前の服を脱ぎ、用意された衣装に袖を通す。

「自分の魅力を、押し殺してまでっ」

白い衣装のボタンを閉め、
茶色の袖なしの羽織を羽織り、
袖ありの羽織を羽織り、
茶色のヒダヒダの腰巻きをし、

「色気より食い気の、美朱なんかのフリ、
しなきゃならないのよっ!?」

青いリボンの首飾りをし、
解せなさに、ブツブツ、と、
止まらない文句を口にしながら、
もう手慣れた感じで、
長い髪を、2本の赤いリボンで、
ふたつのお団子頭にする。

姿見の前に立ち、
ちゃんと白い衣装は腰巻にinで、
茶の衣装は腰巻からoutになっているか、
腰巻の丈は長すぎず短すぎないか、

(個人的に、もちょっと丈、短いほーが
かわいーと思うんだけど、
勝手に腰でたくし上げてたら、
短すぎる!って、星宿様から指導入っちゃったしぃ、この間)

首飾りは曲がっていないか、
赤いリボンは、縦結びになっていないか、等々の、
最終チェックで、
ご指定の衣装の着こなしは、
もはや、模範的に完璧だったが、
それ以外が、にへら〜と、口角は上がり、
タレ目がちな目尻はもっと下がり、
顔のデッサンが狂ってるのが分かる。

頬を、ぺちぺち、と、両手で、二、三度、軽く叩き、
陛下に、

「(私以外で)美しい顔(の男)」

と、言わしめた美貌の顔に戻す。

カラダが、キュン、と、濡れているのは、分かる。



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