恋に落ちる音がした

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要に土曜日の約束を取り付けた後、仕事を終えて家に帰った名前は、机の上に置かれた二人のホストの名刺と、爆豪の名刺入れを見比べながら要との会話を思い返していた。

『UAって言ったら、オールマイトが経営してるので有名なホストクラブですよ』

名前は知らなかったのだが、最近のやり手起業家と称される八木俊典ーー通称オールマイトは元歌舞伎町No.1ホスト。
彼はホストクラブで得た人脈を基に現在様々な業界に進出、成功を収めており、現在は彼に憧れる者を支援するため、その者らを雇ってホストクラブを経営しているのだそうだ。

(オールマイト、確かにテレビで観たことあるかも)

私の上司もいつかオールマイトとの企画を取り扱いたいなんて言ってたな。オールマイトのネット記事を検索しながら名前は考える。

と言うことは、彼ら三人もオールマイトに憧れているのだろうか。ただホストになるだけなら、他の店でも良いだろう。
ホストのイメージが似合わない切島がホストをしていたのも、起業家に憧れて、と考えれば納得がいく。

「凄いなぁ」と心の声が一人きりの部屋に漏れた。

上から降りてくる仕事をこなすので手一杯な名前には、自分で会社を起こすなど雲の上の話のように思えた。
自分と歳も変わらないように見える彼らが、夢に向かって頑張っている。

自分の頬をペシッと軽く叩くと、名前は再び携帯電話で検索を始めた。
まずは彼らへのお礼を決めなければならない。
要の勧めてくれた店を検索して「あぁー」と唸る。

(20代の男性って何を貰ったら嬉しいんだろう)

名前は久しぶりに頭を抱えたのだった。


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