僕のヒーローアカデミア
□初詣
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クリスマスが終わった頃、私たち雄英生は一時帰省に向けて各々忙(せわ)しくしていた。
皆で初詣に行く案も出ているようだが、きっとこの人は不参加だ。
先程から何も言わずにソファに腰を掛けている彼氏に声を掛ける。
「ねぇ、かっちゃんは初詣参加する?」
付き合い始めた時、彼をかっちゃんと呼ぶようになった。長い付き合いの緑谷君だけに許された呼び名だと思っていたから、彼から「好きにしろ」と許しが出た時、なんだか距離が近づいた様な気がして嬉しかったことを覚えている。
「ぁ?行かねぇ」
こちらを振り向きもせずに答えるかっちゃんは、付き合う前と大して変わらない。
「そっか」
「……名前は行かねぇのかよ」
かっちゃんがボソッと呟くように私へ問いかける。
付き合い始めて大きく変わったところは無い。だが、彼は以前より私を気にかける素振りをとる事が多くなった。それが物凄く嬉しい。
「かっちゃんが行かないなら、私も行かないよ」
皆には悪いが、やはりかっちゃんの居ない初詣は魅力が乏しい。
「んだそれ」
呆れたような声はきっと照れ隠しだ。そう思うようにしている。
「かっちゃん、年賀状送るから」
会えないのならせめて年賀状を。携帯で送るメッセージよりも心に残るのではないかと、古い考えかもしれないが送りたいと思った。
「必要ねぇ」
少し苛ついたかっちゃんの一言。
寛容な私も、流石にニの句が継げなかった。
そういうの嫌いなタイプだったのだろうか。
私の心に不安がよぎった時、彼がこちらを振り返る。
「元旦に会うなら別に年賀状は必要ねぇだろ」
かっちゃんの顔は少し眉間に皺が寄っていて、何か文句があるようだ。
「……クリスマスも元旦も一緒に過ごしたいっつったのはテメェだろ。忘れるくらいなら言うなや」
付き合い始めた頃、確かにそんな話をした。かっちゃんはベタベタするタイプじゃ無いだろうから、私の一方的な願いで聞き入れられる事は無いと思っていた。
「……かっちゃん、初詣迎えに来てくれる?」
「……家で待ってろ」
「かっちゃんが行かないなら、私も行かないよ」
「んだそれ」
(約束忘れてんじゃねぇよ。俺だけ覚えてるなんて、一人浮かれてるみてぇだ)