僕のヒーローアカデミア
□赤ずきんちゃん
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森を入ってすぐ、地味な佇まいの緑谷さんのお家の玄関で、なんだか赤ずきんちゃんが困っているようです。
「あれ……緑谷さんお出掛けしてるのかな。」
呼び鈴を鳴らしても緑谷さんは一向に出て来ません。八百万さんと蛙吸さんと約束をしているため、一人で森へ入れない赤ずきんちゃんは考えます。
(確か、この先に爆豪さんのお家があったはず。緑谷さんの代わりに爆豪さんと一緒に行けば良いんだわ)
赤ずきんちゃんはそう考え、森の中へテクテク進んでいきました。
緑谷さんの家を少し過ぎた処にあるシックなお家が爆豪さんのお家です。
赤ずきんちゃんが呼び鈴を鳴らすと、爆豪さんが家から出てきました。
「……名前か。何か用かよ」
いつも不機嫌そうな爆豪さんも、赤ずきんちゃんが相手だと眉間の皺もどこへやら。顔つきが少し穏やかになっています。
「実はーー」
赤ずきんちゃんが事情を話すと、爆豪さんは少し待っているように告げ、部屋へと戻ります。
ひと時の後、戻ってきた爆豪さんの手には上着が一つありました。赤ずきんちゃんへ上着を押し付けると爆豪さんは言いました。
「着ろよ、夜の森は冷えるからな。風邪引かれたら迷惑だ」
そう言うと、赤ずきんちゃんが上着を着れるよう、赤ずきんちゃんの腕に抱えられたバスケットをひょいと取り上げ、一人歩き出してしまいます。
急いで上着を着て爆豪さんに追いついた赤ずきんちゃん。息を切らしながら感謝の意を述べます。
「あのっ……ありがとうございます。その、バスケットまで持って頂いて……」
爆豪さんは、赤ずきんちゃんを一瞥すると言いました。
「この辺は狼も出る。テメェが食糧なんか持ってチンタラ歩いてたら格好の餌食だからな。さっさ歩けや」
ぶっきらぼうな中にも優しさを含んだ爆豪さんの言葉は、冷たくなっていく気温とは逆に、赤ずきんちゃんの心を温かくしてくれます。
「……はいっ!」
赤ずきんちゃんの速度に合わせて少しゆっくり歩いてくれる爆豪さんの横で、赤ずきんちゃんは一人笑みがこぼれます。
「あ?何笑ってんだ」
爆豪さんが不思議そうに尋ねます。赤ずきんちゃんは、自分の早まる鼓動や温かかな気持ちの感情の名前が分からず、爆豪さんの問いに戸惑います。
「えっ⁉いや、その、えーと……
ぁの、上着!!そう!良い匂いだなーなんてーー」
勢いよく喋る赤ずきんちゃんの様子に、爆豪さんは呆気に取られポカンとしています。
(はっ!しまった。何とか誤魔化さなきゃと思って、私ったら余計なことを!)
赤ずきんちゃんは真っ赤になった顔を俯けて爆豪さんに言いました。
「あの……やっぱり何でもないです」
早く麗日さんのお家に着いてーー
赤ずきんちゃんの願い虚しく、そこから無言で半刻歩き続ける。