僕のヒーローアカデミア

□教えて爆豪くん
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金曜日の放課後ーー
雄英高校1−Aの教室には、日直の仕事を終えて帰り支度をする名前と爆豪の二人の姿があった。


「あぁ、もう日が暮れ始めてる……こんなに時間がかかるとは……」

「テメェが間抜けな上にチンタラやってっからだろぅが!」

「うぅぅ……」

爆豪に怒鳴られた名前は、肩をすぼめ項垂れる。
元々、二人が任された作業は明日使用するプリントの印刷とホチキス留めのみの簡単なものであった。ところが、名前が印刷方法を間違えた為に、プリントの並び変えという手間まで増えてしまい、当初の予定時間を遥かに過ぎてしまっていた。

しかし、爆豪に迷惑をかけて怒らせてしまったものの、名前には二人きりの今だからこそ爆豪にお願いをしたいことがあった。爆豪の怒る顔がはっきりと目に浮かぶが、決心して、そして少し軽い調子で話し掛ける。

「ほんと申し訳ない……申し訳ないついでに爆豪君にお願いがあるんですが……今日、勉強を教えてはもらえないでしょうか」

「ぁあ゛⁉なんっで俺がテメェに勉強教えなきゃなんねぇんだ⁉自分でやれや」


あぁ言わんこっちゃないとは自分でも思ったが、後には引けない理由が名前にはあった。


事は朝にまで遡るーー



「来週からは期末テストだ。お前ら分かってると思うが、赤点には補講が待ってるからな。この休み、必死こいて勉強しろ。」


無慈悲なイレイザーの言葉に、名前の心はこの日一日深く沈むこととなる。
座学は名前の得意とする分野で、成績は爆豪とさほど変わらない程度であった。そんな名前が爆豪に教えを請うのは、ひとえに個性の訓練で躓いてしまったことにある。
皆が次々に技を編み出し強化していく中、名前は未だ新技を思い浮かばず足踏みしていた。
その為ここ数日は、普段勉強に当てる時間を1人訓練場で個性強化の訓練に勤しんでいたのだ。
要領よく勉強も……とはいかなかった名前は、素行は悪いが要領の良さ、そして勉強においては一目置いている爆豪を見込んで、勉強の遅れを取り戻すべく頼み事をするに至ったのである。



「えーみみっちぃよ、爆豪君。」

「誰がみみっちいだゴラァ‼」

息巻く爆豪に対して、名前は爆豪が必ず乗ってくると思われる誘い文句を放つ。

「私、爆豪君は、実は人を切り捨てることの出来ない根は優しい人だと思ってるの。そんな爆豪君が断るなんて……ねぇ、もしかして……爆豪君も試験勉強出来てなくて教えれないんじゃーー

「ンなわけあるかぁ‼テメェと一緒にしてんじゃねぇぞ⁉上等だコラ、教え殺したるわ‼」

負けず嫌いの爆豪が思惑どおり誘いに乗った瞬間、喜びと少しの驚きで名前は息を呑む。

「っっじゃあ今日夜、爆豪君の部屋ね!ほんとありがとう!」

引っかかったと言わんばかりの含み笑いを引っさげて廊下へと駆けていく名前の後ろ姿を、爆豪はわななきながらも見届け、舌打ちをした。

窓の外を見ると既に陽は落ち、夕陽の明るさも西の空にうっすらと残るだけとなっていた。


別に名前の企みに気付かなかったわけではない。ただ彼女が人一倍努力をし、悩んでいた。その姿を偶然訓練場前を通りかかって見つけた時から、爆豪は名前のことを少なからず認め始めており、無下に彼女を突き放すことが出来なかった。つまり、彼女の企みに気付きながらも乗ってあげた、というところ。








そら毎日遅くまで訓練してりゃ勉強が疎かになんだろーが










誰もいなくなった教室に独り言ち、だだっ広い空間に溜息を残して爆豪も廊下へ出る。


飯食って風呂入って、あぁ、今日は自主練出来ねぇな…
そんな事を考えながら寮までの帰途に着く爆豪の足取りは、心なしか早まっていた









ー余談ー

恋愛感情は無くたっていい
爆豪君実は超良い奴説
勉強中ふいに「技の方はもう出来たのかよ」とか言って相談乗ってあげたらなお良い奴


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