呪術廻戦

□お節介かもしれませんが
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最近変なものが見えるようになった。
幽霊、と言うよりはバケモノ、と言った方が感覚的には近いだろう。
そして、それらのバケモノは自分以外には見えていないということが、名前には何より不気味に感じられた。

(幽霊を視ることができる人が「ショックな出来事が起きてから幽霊が見えるようになった」ってテレビで言ってたっけ)

もしその話が本当であれば、名前には思い当たる節があった。
2ヶ月前、名前は通っている高校で神隠しにあったのだ。
実を言うと、当時のことはあまり覚えていない。
ただ、苦しい思いをしたことだけは覚えていた。
救助した人の話では、あと少しでも遅ければ命は無かったという。
このご時世に神隠しなんて話はとても信じられなかったが、自分に起きた現象を名前は周りに上手く説明は出来ず、結局神隠しということで大人たちは納得したようだった。

(不気味なバケモノたちはあの後から視えるようになった)

幸い、バケモノは視えてないフリをすればこちらに近づいてくることは無かった。
名前が通学で利用するバス停にはいつも同じバケモノがいた。
そのバケモノは何をするという訳でもなく、通行人にちょっかいをかけては、また定位置に戻るということを繰り返していた。
大丈夫だ、他の人と同じようにバケモノに反応さえしなければ、と今日も名前は自分に言い聞かせてバス停の一番端の長椅子に落ち着いた。




「おい、傑。そんなん取り込むの?」

自分より先にバス停にいた男子学生たちの会話が耳に入った。
ゲームか何かの話だろうか、と一瞥すると、二人の男子学生は明らかにバケモノを指差して話をしていた。

「あぁ。確かに弱いが、いつか人を傷つけるかもしれないだろう?」

バケモノは二人に気が付いて、今までに見た事が無い不気味な動きをしている。
襲われる、そう思った時、一方の男が片腕を振り上げた。

それは一瞬のことで、名前には何が起きたのか分からなかった。
彼が何をしたのかを目で追うことは出来なかったが、気味の悪いバケモノは姿を消し、代わりにその男の片手に黒いボールのような物が転がっていた。

(頭が追いつかない)

バケモノを視認することができる人を初めて見た。
そして、その内の一人はバケモノを消すことができるらしかった。

(何者なの)

男たちは体格的に高校生だと思われたが、この辺りでは見た事のない制服であった。
一人は高身長に白髪、サングラスをかけていて、どう見ても不良だ。
正直言って関わり合いたくないタイプである。
そして、バケモノを消した方の男は白髪の男と同様に背が高く、長い髪をお団子にしていた。
露わになった耳にはピアスが付けられている。
こちらも不良らしい。何より

(ボンタンて……)

今時、暴走族でもボンタンなんか履かないだろう。
初めてバケモノを視認できる人を見つけた名前はバケモノについて色々と聞いてみたかったが、不良となると話は違う。
難癖をつけられたりして変に絡まれるのはごめんだ。

ボンタン男の手に乗った黒いボールはバケモノと同じ禍々しさを放っていた。

(バケモノを祓ったわけではない?)

所謂霊能者とされる人の中には霊を祓うことができる人もいるそうだ。この男もそういった類かと思ったが、最近おかしなモノが視えるようになったばかりの自分では上手く判別ができなかった。

名前が考えに耽っていると、白髪の男がこちらに気づいて顔を歪めた。

「あぁ⁉さっきから何ガンつけてんだよ」
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