恋に落ちる音がした
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まだ人通りも多い時間帯、大通りから抜ける路地に数人集まり、何やら揉めているのを男たちは目撃した。
「おいおい、喧嘩?警察呼ぶ?」
顔を引攣らせながら携帯を取り出したのは職場の仲間。顔には関わりたくない、と書いてある。
「警察が来るまで待てっかよ。なぁ爆豪、お前も行くだろ」
血気盛んなこの正義漢も職場仲間。どうやら喧嘩を止めに行く流れらしい。
「ぇ、マジで行くの」
男が通報しようとした携帯をどうしたものかと目線で問うてきたので、その携帯を押し下げながら言った。
「怖えーなら待ってろよ」
自分たちの仕事柄、あまり警察に頼るということをしたくなかったし、何より憧れの人が「私たちが歌舞伎町の治安を担っている」と、昔言っていた。
あの人のようになりたいと願う爆豪にとって、少なくとも自分の手の届く範囲で起こる揉め事は、見過ごせない問題であった。
それに、と爆豪は考える。
(この正義漢を一人で行かせて警察沙汰にでもなったら、あの人に頭が上がらねぇ)