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□番外編 サンタンジェロ城のロマーノ
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「…上手いな。踊ったことがあるのか?」

『ええ、まあ。昔の上司の方針でして…。』

俺はサンタンジェロ城で椿とダンスをしていた。いい雰囲気になりつつあり、このまま告白してしまおうか…と考えた時、突然スペインが椿の手をつかんだ。目が笑っておらず、怒った時のスペインによく似ていた。

『…?スペインさん、どうされましたか…?』

「おいスペイン、どうしたんだよ…?」

怒っているのか?でも怒らせるようなことをした覚えはない。さっきまではいつも通り明るいスペインだったじゃないか。

「…次は俺と踊ろか」

そういってスペインは椿を俺から引き離したかと思えば、突然手をぐいと引っ張って走り出した。

『わっ!?』 「おいっ、どこ行くんだよ!?」


突然のことに体が動かなかった。数秒経って我に返り、後を追いかけようとする。
あいつはローマの土地勘なんてないからな。行ける場所は限られている。…大体共和国広場あたりか。
ロマーノは共和国広場へ向かう。

向かおうとした。

しかし、結局足を数歩進めただけでその場に立ち尽くしてしまった。

…あいつは、もしかして……

ある一つの結論に達した時、ロマーノは愕然とした。そうか、そうだったのか。と。

…スペインも、椿のことが好きだったのか。

そう考えてみると全て納得がいった。あいつは今日そわそわしていてどこか落ち着きがなかった。
髪を引っ張ったり、いつも以上にテンションが高かったり、俺の言う事に被せてきたり、時々寂しそうな顔をしていた。
あれがすべて椿に向けられた気持ちによるものであるとしたら…あいつは今日、相当な我慢をしていたのではないか?
スペイン広場でのやり取り、俺がサンダルをプレゼントした時、真実の口でのハグ、サンタンジェロ城でのダンス……あいつは一体どんな思いで見ていたのか?どんな思いで一緒にいたのか?


……追いかけるなんて、できるかよ。


多分俺のこういうところが駄目だと言われる所以だろう。わかっちゃいるが…邪魔をしてはいけない、そんな気がした。
もし、二人がくっついたら…俺はここで追いかけなかったことを後悔するのか。
それはわからない。そもそも二人がくっつくかもわからない。ただ、今は不思議ともやもやした思いはなかった。焦りはあるものの、あいつを憎いとは思わなかった。
それは俺にもあいつの気持ちがわかるからなんだろうな…。
綺麗にライトアップされた城の前、ロマーノは一人彼らの帰りを待っていた。
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