If stories
□If ローマの休日編 4
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「…さすがに船は用意できてねーけど」
ロマーノは手を差し出す。
「映画みたいに…俺と、踊ってみないか?」
『えっ、しかし私ダンスなどできませんし…。わっ!』
椿が言い終わるのも待たず、ロマーノは手を取ってダンスを教える。
「簡単だ。俺に合わせて足を運んでみろ。」
自然と距離が近くなるのでどうしても意識してしまう。
『ええっと…こ、こうでしょうか!?』
てんぱりながらも懸命にステップを踏む。次第に慣れ、リズムに乗れるようになってきたところでロマーノは慣れた手つきで椿をリードしくるりと回転させる。
お城をバックにダンス。なんだか自分が御伽話のお姫様になったようで、ドキドキしていた。
「…上手いな。踊ったことがあるのか?」
『ええ、まあ。昔の上司の方針でして…。』
ロマーノさんの息遣いまで感じられ、目を見ることができない。顔が熱く、きっと今私の顔は赤いのだろうと思った。
そしてダンスを終える。なんとか全て踊ることができたが、それはロマーノのエスコートによるものが多い。お礼を言おうと顔を上げるとロマーノの顔が目の前にあった。
「『っ!』」
お互いびっくりして顔を背け、お互い心臓がバクバクしていた。
「…二人とも、なんちゅう顔しとるんや。」
そういってスペインさんはこちらに向かってくる。
「そんな顔しとるとな、俺が捕まえたくなってまうやろ。」
スペインは椿の手を取ろうとした。
が、ロマーノに払いのけられる。
「やめろよスペイン。…それともこのまま川に飛び込んで橋の下まで泳いで逃げてやろうか?」
挑戦的な笑みを浮かべるロマーノにスペインは一瞬真顔になり、フッと笑った。
「…やめとくわ。ほな、親分お城見てくるから、…あとは二人で、な?」
そう言ってスペインは去っていった。スペインなりに気を遣った結果だろう。
『…あの。一体どういう意味で…?』
「椿。話があるんだ。…いいか?」
いつになく真面目なロマーノに椿はハッとした。
「俺は、…椿のことが、好きだ。すごく。だから、俺と……俺と、付き合ってくれないか!?」
顔を真っ赤にして懸命に想いを伝えるロマーノに椿は目を奪われていた。
驚いたが、すごくうれしい。この年でそんなことを言われるなど思っておらず、何よりあのロマーノ君に言われた。答えは一つしかあるまい。
『…はい、よろしくお願いします。』
ロマーノ君は目を輝かせて抱き着いた。
「本当か!?嘘じゃないんだよな!?」
『本当ですよ。疑ってるんですか?』
「そんなわけないだろ!う、嬉しいぞ、このやろー…」
ライトアップに照らされて二人はずっと抱き合っているのだった。