If stories

□If ローマの休日編 3
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『…ごめんなさい。』

断腸の思いで言い切った時、何かが自分の中で消えた気がした。

「……そか。ありがとな。」

そういうスペインさんは辛そうだった。そんな顔をさせたかったわけではないのに。なんて残酷なことを任されてしまったのだろうと再認識した。

「そろそろ戻らんと、ロマーノに怒られてしまうなあ。」

『…はい。』

「最後にもう一つだけ。………ええか?」

『…何でしょう。』

「最後に…。もうこれで諦めるから…。最後に一回だけでええから、抱きしめさせたってや。」

一瞬迷った。そんなことをしてもいいのか、私は亡国だぞ、そんな資格はないのではないか、と。
しかしスペインさんの目があまりに辛そうで、そんなことを考えてもいられず、あくまでも人助けの一環として、腕の中に納まることとなった。

「はは…、ほんま椿は優しいなあ…。だからやめられへんのや。」

そういうと突然キスをされた。

『ンっ!? やめっ…』

「…黙って。」

引き離そうとしても椿の非力な腕ではどうにもできず、手首をつかまれてしまい自由を奪われてしまう。

『っや、…ん、っ!』

舌を入れられ、絡められリップ音を立てて口腔内を犯される。感じたことのない強い刺激に椿はくらくらと力が抜け、されるがままだ。

「…そうやって、すぐ人信用してこうなっとる椿が好きやで。…諦められへんわ。」

そしてスペインさんは服の中に手を伸ばす。流石に驚いた椿は我に返り必死で抵抗する。

『やっ!やめてください、お願いします!』

「そんなこと…言わんとって。」

駄目。全く聞く耳を持っていない。力が強く、もう防ぎきれない。誰か……

その時、携帯が鳴った。着信音でスペインさんも我に返ったようだ。
その着信は日本さんから、「今どこにいるか、そろそろ帰ってきなさい」という内容のものだった。

『……帰りますので。それではっ。』

「あ……椿、違うんや、ごめ………」

思わず逃げるように走って駅に向かう。スペインさんは今まで自分が何をしていたのか思い出し、罪悪感に苛まれているようだった。
怖かった。怖かった。怖かった。
あんなこと、二度と経験したくない。
日本さん、ドイツさん、イタリア君。
……助けて。
あふれる涙をぬぐおうともせず椿は駅までの道を走り去る。早くあの優しい3人のもとへ帰りたい。それだけを胸に抱いて走る。
…今日のことは確実に椿の心にトラウマとして刻み込まれることとなった。




もしも共和国広場でスペインが椿をあきらめきれなかったら。椿はひどく傷ついていただろう。



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