If stories

□If ローマの休日編 2
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「…上手いな。踊ったことがあるのか?」

『ええ、まあ。昔の上司の方針でして…。』

そこまで声に出した時、突然スペインさんに手をつかまれた。目が笑っておらず、何か決心したような目で私を見ていた。

『…?スペインさん、どうされましたか…?』

「おいスペイン、どうしたんだよ…?」

いつもと違うスペインさんの様子に、ロマーノさんも訝し気な眼をしている。

「…次は俺と踊ろか」

そういってスペインさんは私をロマーノさんから引き離し、ダンスを踊り始めた。
こちらも昔教わったことのあるものだったので昔の記憶を頼りにステップを踏む。ぎこちない椿をスペインがエスコートしてくれているおかげで何とか形になっている。
しかしスペインの怒っているような緊張しているような雰囲気がどこか怖かった。

『あの…どうされたんですか?』

「…気にせんでエエよ」

『でも…!』

「じゃ、言うけどな、俺、椿のこと好きやねん。冗談なんかやないで…本気や。」

『えっ…え?』

「椿がロマーノと踊ってるところ見て、ちょっと悔しかったんや。だからこんなことしてみたんやけど、驚かせてしもてごめんな。」

「おい、スペイン… お前、なんで、」

そんな声が聞こえたためちらりと横を見るとロマーノさんがひどくショックを受けたような顔をしていた。

「…ロマーノ、ごめんな。俺お前の気持ち知っててん。だから我慢しよ思ったんやけど、自分に嘘とかつきたないんや。」

スペインの声もまた、悲痛に満ちていた。そこでダンスは終了した。辺りには気まずい雰囲気が漂っていて、どうしたらいいのかわからない。

「椿!…俺は…、お、俺だって、お前のこと……好きなんだよ!嘘なんかじゃねーぞ…本当だ!今日過ごしてて本当に楽しかった!
 椿は…違うのか?楽しくなかったのか?俺のこと、どう思ってる!?」

そんなこと言われたって、わからない。
確かにさっきときめいた。それも、二人に。そのときめきというのもきっとその状況がさせた一時的なものなのであろうし、「好き」未満のものであろう。
まさかスペインさんとロマーノさんが。今の椿の中にはこの思いしかなかった。

『今日は、確かに楽しかった、です。』

「「………」」

『でも、そんな、好きだなんて私にはわからなくって、二人ともいい方達ですし、そんなふうに思って下さっているなんて知らなくて…』

「…答えが、出ないんやな?」

『…優柔不断で、ごめんなさい。私は、こんな女ですので…。』

「それでも俺は椿が好きなんだ。俺じゃダメなのかよ?」

『〜っそういう事ではなく…!』

どうしたら。どうしたらいい。そんなことを考えれば考えるほど何も考えられなくなっていく。

「…せやったら、無理はせんでええよ。ロマーノもやろ?そんなつらい顔させたないわ。」

「……ああ。」

ぽんぽん、と頭を撫でられる。

「いきなりこんなこと言うてもてごめんな。混乱させるつもりはなかったんよ。…でも、いつかは答えてくれな。」

『は、はい…。』

「ま、待ってるからな!絶対こんなやつより俺のほうが椿のこと好きだし、絶対幸せにできるからな!絶対だぞ!」

「はは…。ロマーノはひどいなあ…。俺は今すぐにでも連れ去ってしまいたいんやけどなあ。」

「なっ!?俺は抱きしめてキスしてやりたいぞ!」

『本人の目の前でそんなこと言うのやめてください…』





もしもロマーノの目の前でスペインが告白していたら。椿は二人からの求愛を受け、困ってしまうだろう。



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