ヘタリア長編 その目で見つめて
□8 亡国同盟
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「これはどういうつもりだ、兄さん………!」
地の底から響き渡るような低い、激しい怒りを込めたその声は爆発しそうな勢いがあった。
「おうヴェスト、Guten morgen. よくここまでたどり着いたな?流石俺様の弟だ、褒めて遣わすぜ「どういうつもりだと聞いている!!」
ドイツは怒りで周りが見えていないようだ。プロイセンはこの状況を面白がるような調子で続けた。
「何って、見ての通りだぜ。人の逢瀬を邪魔するなんざお前も無粋だな?」
「………もういい、あなたは少し眠っていてくれ。」
つかつかとこちらに向かって歩き来たドイツはプロイセンの首に腕を絡めた。
「ちょ、裸絞めかよ…俺様それ、苦、手………」
ギリリと力を込められ、数秒後、フッとプロイセンは落ちてしまった。先ほどまであんなに強大だったプロイセンが今や気絶しているのを下から眺めながら、他人事かのようにあっけなく感じていた。
助かったのか、と頭がぼーっとしている中上着がパサリと掛けられた。そういえば、今の自分は服がビリビリに千切られて下着が見えていたのだった。すっかり忘れていた、申し訳ないと思っていると、
「……本当に、すまなかった………!!」
先ほどとはうって変わって本気で申し訳なさそうなドイツの声が降ってきた。
「本当にすまない、全部兄さんを野放しにしていた俺のせいだ。怖い思いをさせてしまって本当に、すまなかった……!!」
『あ、いえ、そんな…ドイツさんは別に悪く、ないですし……』
心配かけたくない一心でそんなことを言ってみるものの声は震えていた。まだ先ほどの恐怖が残っていたのか、心はぐちゃぐちゃだった。
「…怖かっただろう、もう大丈夫だ。安心してくれ。」
ぽんぽんと頭を撫でられぐちゃぐちゃだった心は一気に消え去り、助かったのだ、という強い安心感に変わってぶわっと涙が出てきた。
『…すみませ…っ、でも、来てくれて、ありがとうございます……』
ドイツは椿が落ち着くまで一緒にいてくれた。不器用ながらひたむきなその優しさに浸りながら、椿は徐々に落ち着きを取り戻していった。
『今日は本当に、ありがとうございました。』
ようやく泣き止んで赤い目をしながら椿はぺこりとドイツにお礼を言った。薬の効果も切れてきたのか、まだふらふらはするものの自由に動けるようにはなっていた。
「…その、もし嫌ならばいいのだが、何があったのか説明できはしないか…?」
『…………』
「いいから、俺を見てろよ!その方がお前にとっても、ヴェストにとっても幸せなことなんだ!!!」
これは先ほどプロイセンが言い放った言葉だ。…真意が全くわからない。しかし、この暴挙の裏には何か深い事情がある気がして頭から離れず、ただの乱暴事件として片づけるのは違う気がしていた。
『あの、その前にお願いがありまして…プロイセンさんと、1対1でお話させてくれませんか?』
その予想外の話を聞いて、ドイツは面食らった。
「…兄さんとか?大丈夫なのか、だってこの人は椿にひどいことをしたんだぞ!」
『それはそうなのですが…この行動にも、プロイセンさんなりの考えがあったのではありませんか?私はそう思えて仕方がありません。…なのでお願いです。お話させてください。』
「………構わんが、無理はするなよ。1対1なら俺は外で待っていることにしよう。ああ、もちろん拘束はガッチリしておく。…これでいいだろうか。」
ドイツは椿が心底心配だった。1対1で話すなど本当は危険極まりないんじゃないか、相手はあの兄さんだぞと危惧しており、何より椿をこれ以上危ない目に遭わせたくなかった。
しかし椿の意思も固く、説得しても簡単には引き下がらないだろう。…ここは椿を尊重するべきか。ドイツは引き下がることにした。
とりあえずプロイセンの手足をきつく縛り付け、簡単には解けないようにした。
「兄さん、兄さん!起きてくれ、話をする。」
「……ん?」
ぺちぺちと頬を叩かれ、プロイセンは気絶から回復した。数秒ぼーっとした後、この状況を思い出したらしい。ハッとして周りを見回す。
「具合悪くはないな?」
「あ、あぁ…」
「よし、これから椿とサシで話をするんだ。俺は外で待っているからな。何かしようものならすぐに俺が飛んでいく。変な気は起こさないこと。正直に話すこと。いいな。」
「分かった… ヴェスト、その、すまねぇな…」
「……椿、何かあったらすぐに呼んでくれ。」
『はい。』
そうして、部屋にはプロイセンと椿の二人きりとなった。