ヘタリア長編 その目で見つめて
□4 音楽の都
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今朝も気持ちのいい朝だ。昨晩寝落ちした椿は急いでお風呂に入り、着替え、髪を整えた。ようやく人前に出られるような身なりになったとき、ちょうど日本が部屋を訪ねてきた。
「おはようございます。疲れは取れましたか?」
『おはようございます。おかげさまですっかり…。今日は目いっぱい楽しもうと思います。』
「ぜひそうしてください。ドイツさんたちはあと一時間ほどで着くそうなので、それまでに朝ご飯を頂いてしまいましょう。」
朝ご飯を頂いた後、いったん部屋に戻って荷物をまとめることにした。そして、初日にドイツに買ってもらった髪飾りが目に入る。
(…付けて行ったら、喜んでくれるでしょうか……。)
一瞬、スペインの顔が思い出された。今の今まで準備が忙しくて忘れていたが、昨日の出来事は椿の心に深く突き刺さっていたのだった。
(どうして今、そんなことを考える必要が…。今日はヨーロッパ観光なのです。ぜひ、つけて行きましょう。)
そうして、椿は長い髪をまとめるワンポイントとして髪飾りを付けて行くことにした。なんとなく照れくさかったが、お気に入りとなっていたので胸を張って出ていくことにした。
靴は…。ロマーノに買ってもらったヘップバーン・サンダルを履いていくことにした。昨日全力疾走した後も靴擦れなどを起こさず、歩きやすく、おしゃれであったからだ。
ロビーまで降りていくと日本もちょうど準備を終えて降りてきたところだった。
「おや、髪飾り。それと…靴を履き替えましたか?」
『はい。昨日ロマーノさんがローマでプレゼントしてくれたものです。履きやすかったので履いてみました。』
「!?」
日本さんは顔を引きつらせて驚いた…ように感じましたが、気のせいだったのでしょうか。にっこり笑っています。
「そうなのですか。よく似合っていますよ。」
『ありがとうございます。』
やはり気のせいだったようです。サンダルをほめてくださいました。
しかしやっぱり気のせいなどではなく、日本の頭の中は驚きでいっぱいだ。
(ロマーノさんが、サンダルをプレゼント…!?一体どういうことなのでしょう!?もしかして、三角関係…?三角関係なんですかっ!?どうなんだあああ!!)
荒ぶっている祖国だが、そんなことは絶対に顔に出さない。もはや表情筋のプロと言っても過言でない。
一方、ここはドイツ車内。イタリアとドイツが日本と椿の宿泊先のホテルに向かっているところだった。
「ドイツ、今日が椿を振り向かせる大チャンスなんだからね!ちゃんとしろよ!怖がらせるなよ!ただでさえムキムキなんだから雰囲気だけでも柔らかくしろよ!」
「む…。そうか。柔らかく。」
「ヴぇ、そう、柔らかーく、ふわふわっとするんだよー。ほら女の子って柔らかい物好きだろ?あんな感じだよ!」
「そんな感じなのか……?大体、いつもナンパ失敗してるお前に言われたって説得力がないぞ。」
「それは言うなよー…。」
いつも通りのイタリアとドイツなのであった。
しばらくしてドイツさんたちが到着した。今日はイタリア君の車ではなくドイツさんの車で観光するようだ。
「ciao!一日ぶりだね日本、椿!俺今日すっごく楽しみにしてたんだあ!今日も楽しもうね!」
「Guten morgen、日本、椿。今日はよろしく。ぜひヨーロッパを楽しんでいってほしい。」
(((よしっ、うまくいった!)))
日本、ドイツ、イタリアの三人が同時に同じことを心の中で喜んだ。ドイツが緊張で堅くなりすぎなかったのだ。まさにイタリアの言う、柔らかい感じを体現できていた。
『お二人ともおはようございます。いい朝ですね。本日はよろしくお願いいたします。』
「あ…、椿,その髪飾りは、この間のか?」
(ドイツさんがさっそく髪飾りを見つけました。
その表情からは驚き、喜び、照れなど数多くの感情が見て取れるようです。)
『はい。綺麗でしたのでつけてきました。』
「そうか…、つけてくれて嬉しい。ありがとう。」
(言ったあああ!朝から見せつけてくれますね。こちらがにやけてしまいそうですよ…。)
(アイツ今日はすっごい調子いいね。この調子なら今日で何か進展があるんじゃないかなあ。)
イタリアと日本は逐一ドイツの様子を実況している。小声でひそひそと言っているだけだが、完全にこの状況を楽しんでいた。
「じゃあ、そろそろ出発しよっか〜!今日行くところはドイツが考えてくれたんだもんね?」
「あ、ああ。そうだ。もし疲れたらすぐに言ってくれ。対応できるようにしてある。」
「おお…。流石ドイツさんです。」
そうして一行は車に乗り込んで出発した。