ヘタリア長編 その目で見つめて
□2 日伊同盟
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「もしもし、聞こえますか〜」
「聞こえるよ〜!」「大丈夫だ。」
現在時刻午後10時。今後について決めるべく、日本、ドイツ、イタリアはテレビ会議を開いていた。
「本日は本当にありがとうございました。椿さんも楽しかったと喜んでおりまして…。」
「ウヴェ、そんな堅苦しい挨拶はなしだよ〜、気楽にふわっといこうよ!ね、ドイツ?」
「ああ。今は完全プライベートだからな。」
こんな感じで、会議はスタートした。
和やかなムードのまま初めに話したのは、今後の日程決めについてだった。
「世界会議がスペインさんのお家で4日後ですね。椿さんも連れて行ってもいいかどうか連絡しなくては…。」
「まあ、あいつの場合連絡しなくてもいいといいそうだがな…。早めに連絡はしておいたほうがいいだろう。」
「じゃあ、ドイツ観光の日程もいま決めとこう!椿ちゃんはこの1週間他の予定とかあるの?」
「あ、明日はローマを見て回りたいといっていましたね…。それ以外なら予定はないはずです。私は明日と3日後、予定が入っていていませんが。」
「なるべく日本がついてたほうがいいよね。あと俺もドイツの家観光したいし…。またみんなで行こうよ。そのほうが椿ちゃんも過ごしやすいんじゃないのかな?」
おそらく、イタリアなりに気を遣った結果だろう。2人きりにさせたいのはやまやまだが、ドイツがまた威圧感を出して気まずくさせては困るし、
椿にとっても肉親である日本がいたほうが何かと安心できると思ってこの提案をしたのかもしれない。
その考えは、口には出さなかったものの全員に正しく伝わった。
「そうだな。そのほうがにぎやかになって楽しめるはずだ。俺は2日後と3日後、5日後休みをとれるが。」
「俺は2日後と5日後空いてるかな〜」
「でしたら、2日後か5日後ですね…。うーん………。
椿さんは、ドイツ観光を楽しみにされているようですので、旅行のクライマックス!として5日後でいいと思うのですが、いかがでしょう?」
「あー、それいいね!よし、ドイツ旅行は5日後で決まりだ!」
「ついでに2日後も出かけないか?みんなの予定が合うようだし、ヨーロッパのいろいろなところに連れていきたいと思うのだが。」
「おお…。ドイツ優しい…。じゃあ2日後はいろんな国に行こう!」
こうして、2日後にヨーロッパ観光、5日後にドイツ観光をするとして話がまとまった。
「…でさ、もうみんなわかってるよな?この会議の目的…。」
会議を始めて10分ほど。イタリアがついに本題へ切り込んだ。
分かっていたことだが、自然と顔に力が入る。
そこで日本が口を開く。
「…ドイツさん。単刀直入に申し上げます。あなたは、椿さんに一目ぼれしましたね?」
「………あぁ、そうだ。初対面から、椿に惚れ込んでいたようだ…。」
「そうですか。」
短い沈黙。お互いに何をどう話せばいいのかわからない様子だった。
そこで、イタリアが仲裁役として促した。
「日本は、どう思ってるんだったっけ?別にダメだって思ってるわけじゃないんでしょ?」
「ええ、まあ。先ほどのお土産店でのお二人の様子を見ていても幸せそうに過ごしていましたし…。私は椿さんの幸せを一番に考えています。
イタリア君にはお話ししましたが、椿さんが幸せになるのならばドイツさんたちのことを応援いたします。」
暖かくも突き放すような日本の態度に、ドイツは少し対応に困った。
何が椿の幸せなのかなんて本人にしかわからない。
それはつまり、今は反対しているということなのだろうか。
「そうか…。そうだよな。今は応援しないということか。」
「おや、まだ話は終わってませんよ?」
え、とイタリアとドイツは面食らう。
「確かに妹の幸せも大切ですが…。私にとってはドイツさんの幸せも同じくらい大切なのです。ドイツさんには何度もお世話になりましたし、何より私の友達です。
…友達の幸せな顔を見たいと思うのは自然なことだと思うのですが、おかしいでしょうか?」
「えっ…日本、それって…!」
「私は、ドイツさんに幸せになっていただきたいので、お二人のことを応援したいと思っています。…ドイツさん、椿さんのこと、幸せにしてくださいね?」
予想もしていなかった日本からの返答に、ドイツは驚いた。
一度諦めた日本からの応援に、言葉が出ずにいた。
「…なんだか、結婚報告を受けた父親のような感じになってしまいましたね。堅苦しいのはなしでしたが…。すいません。」
「いや、日本、本当にありがとう。」
「うん!よかった二人が分かりあえて!」
こうして、日独伊テレビ会議は幕を閉じた。
1日目の夜は、それぞれが自分の気持ちを再確認して静かに過ぎていったのだった。